【考察】

 1.フローパーソナリティについて

 

 1-1.パーソナリティの分類について  

 フロー研究のこれまでは,面接法,質問紙,ESM調査と様々行われてきた。そして,近年では被験者の負担軽減も考慮されESM調査よりもフロー状態を想定した質問紙調査が主流となってきた。また,その流れでオートテリック・パーソナリティの判断の仕方も異なってきた。フロー調査が行われ始めた頃は自己目的的パーソナリティを測る指標として,フローに費やす時間が用いられていた(Adlai-Gail, 1994; Hektner, 1996)。そのため,ESM調査でフロー数が多い人をAP者,フローに全く入れていない人をNP者として研究を進めることが多かった。しかし,ここで問題としてあげられたのは,ESM調査で得られたデータは瞬間瞬間のデータであるため,各個人の環境内に偶然存在した,取組可能な行為の機会に左右されるということである(チクセントミハイ・ナカムラ,2003)。そのため,質問紙で日常生活において熱中する頻度を尋ねる方法が取られるようになってきた。いずれにしても,それぞれのやり方によるフローパーソナリティの測定は各調査のみで完結しており,本研究のようにESM調査と質問紙調査で取ったパーソナリティの組み合わせの検討は未だにされていない。そのため,本研究はフロー研究のオートテリック・パーソナリティを考えるうえで非常に重要な研究となるだろう。  

 本研究では,まず従来の研究でAP者の分類に多く用いられてきた「あなたは日々の生活の中で,活動に熱中したり,没入したりすることがありますか」という項目とKf頻度,Sf頻度とのPearsonの積率相関係数を算出し(Table2参照),身体的活動でのフロー頻度と社交的活動でのフロー頻度がパーソナリティを推定するのに適しているのかを判断した。その結果,Kf頻度,Sf頻度とも有意な正の相関が見られたため,この項目を用いてオートテリックパーソナリティを分類することは有効であると判断した。  

 そこで,フローに入りやすい特性であるAP者を活動の種類により価値の見出しやすさが異なると想定し,身体的活動でフローに入りやすい特性をK-AP者,社交的活動でフローに入りやすい特性をS-AP者,どちらの活動でもフローに入りやすい特性をKS-AP者とした。また,フローに入りづらい特性である,ノンオートテリック・パーソナリティ(NP者)も含め,4つのパーソナリティに分類した(Table3参照)。パーソナリティを分類することで,フローの特性をより詳細に出来ると考えられる。



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