【問題と目的】
2.日常生活とフローの関係性
2-2.マイクロフローの型
上述したように,人は日常生活の中で多くのマイクロフローを体験している。そして,マイクロフローの活動領域も複数ある。Csikszentmihalyi& Graef (1975a)の調査では,ESM(経験抽出法)により,「社交的活動」「身体運動的活動」「想像的活動」「視聴的活動」「口唇的活動」「創造的活動」の六つの活動領域が示された。また,奥上・西川・雨宮(2013)の質問紙調査では,「視聴的な活動」「身体運動的な活動」「創造的な活動」「社交的な活動」「その他の活動」「分類不能な活動」の六つに分類している。このように,マイクロフローは様々な領域での活動の型がある。そして,Csikszentmihalyi & Graef(1975a)は,彼らの調査より人々が異なる方法で毎日の生活パターンを与えていることを見出し,個人によってマイクロフローの型が広く異なると述べている。Csikszentmihalyi & Graef(1975a)の調査では,ある人は身体運動的な活動を多く報告し,また別の人は社交的な活動を多く報告する。また,ひとり言や人間以外の対象への話しかけを多く報告する人は他者と話たり,テレビを見たりすることが少なく,本や雑誌を読んで時間を過ごすことを多く報告する人は,社交的な活動もよく報告している。つまり,人によって行うマイクロフローの型には特徴があることになる。そして,このマイクロフローの領域について,Csikszentmihalyi & Graef(1975a)は,異なる活動や活動領域間の関係を知ることが重要だと述べている。
Csikszentmihalyi & Graef(1975a)は,このマイクロフローの型について年齢と性差からも比較検討をしている。彼らの研究では,年少者(17~22歳)と年長者(23~28歳)の比較をしている。そこでは,年少者の方が自分の経験に型を与え独自の身体運動に多く依存するため,身体的活動を報告する者が多く,年長者になるにつれて人間関係に依存するために社交的な活動を報告する者が多くなっていた。そのため,Csikszentmihalyi & Graef(1975a)は,一般に年齢が進むにつれて,人間関係に関するものを除く,すべての形式のマイクロフローは減少すると述べている。しかし,本研究では自分の意志と興味で活動を自由に選択し,実際に行動に移しやすいのは大学生であると推測したため,対象を大学生に絞り調査を行った。そのため,年齢による比較は困難であると考える。そして,Csikszentmihalyi & Graef(1975a)の調査において,性差に有意な差はみられなかったため,本研究でも性差に焦点を当てることはしない。
さて,マイクロフローの活動領域の中で社交的な活動と身体運動的な活動を比較すると,同一領域内では均一であるが,領域間では異質である(Csikszentmihalyi & Graef,1975a)。他の活動領域の差異は明確ではなく,社交的な活動領域と身体運動的な活動領域においてのみ,ある活動がどちらかの活動領域と正の相関を示せば,もう一方の活動領域とは負の相関を示すというように互いに排除し合っている(Csikszentmihalyi & Graef,1975a)。そのため,Csikszentmihalyi & Graef(1975a)は社交的な活動と身体運動的な活動の二大領域に焦点を絞り,研究を進めている。そのため,本研究もこの二大領域に焦点を当て,研究を進めることとする。
←back/next→