【問題と目的】

3.自己目的的とは

 
 

 3-2.自己目的的な経験  

 自己目的的な経験とは,ほかの報酬なしに継続的な行動を生み出すという意味で,それ自体報酬として働くという具体的なフィードバックに基礎を置く心理状態のことである(Csikszentmihalyi,1975)。また,Csikszentmihalyi(1990)は,経験が自己目的的である時は,人はその活動それ自体に注意を払うと述べている。つまり,自己目的的な経験とは,活動それ自体に価値を見出し,内発的報酬を享受している経験であり,フロー状態であるといえる。  

 自己目的的な経験は自己目的的な活動において経験しやすいものの,必ずしも自己目的的な経験ができるわけではない。また,その逆も真である。そのため,自己目的的な活動以外で,そのような経験ができた場合も自己目的的な経験と呼べる。  

 Csikszentmihalyi(1990)は,フローには人を中毒にする力があると述べている。確かに,人は日常生活の中でも,何かに没頭していると長時間同じ活動をしていても不快に感じない。むしろ,その活動を続けたいという感情を持ち,その活動を行うことに心地良ささえ感じる。自己目的的な経験,つまりフロー経験は人にとってポジティブな感情を与え,同じ活動を続けることへの誘因となるだろう。また,自己目的的な経験を求めて,同じ活動,同じ活動種に多く取り組む者もいれば,さまざまな活動種に対して,挑戦をしていく者もいるだろう。では,このようにフロー経験に対する態度に違いが生まれるのはなぜだろうか。このことについて,次項でパーソナリティの観点より述べる。  



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