【問題と目的】

4.心理的well-being

 
 

 4-3.心理的well-beingと自己目的性  

 佐橋(2003)は,できるかぎり多くの経験場面をフロー化することが,生活全般の質,well-beingの向上につながると述べている。また,フロー体験が多い人ほど,日常生活に充足感・満足感を抱き,心理的well-beingが向上する。つまり,AP者の方が,NP者よりも心理的well-beingが高くなるといえる。Csikszentmihalyi(1990)は,心理的エネルギーの投射なしでも快楽は経験することが出来るが,楽しさは通常にない注意の投射の結果としてのみ生じると述べている。そのため,AP者とNP者の違いは心理的エネルギーを注ぐものに表れるといえる。たとえば,AP者は自己への関心は薄いため,心理的エネルギーは自己目的的な活動へと注がれるが,NP者は自己に対して一番向けられる。そのため,NP者は活動自体へと心理的エネルギーを注ぎづらい。これらより,フローへの入りやすさに違いが生まれ,心理的well-beingにも差が生まれるだろう。  

 さて,従来の自己目的的パーソナリティの測り方では,単にフローを経験しやすい性格特性であることまでしか明らかにされていなかった。しかし,Csikszentmihalyi(1975)の調査より,マイクロフローへの入りやすさに個人差があることが明らかになっている。そのため,自己目的的パーソナリティと一概にまとめたとしても,どの活動に対して価値を見出しやすいかは様々であると推察される。そこで,フローパーソナリティの詳細を明らかにするためにAP者の分類が必要であると考える。  

 以上より,フローを多く体験するAP者の方がNP者に比べ,心理的well-beingが高いことが予想される。また,AP者の分類を図ることで,K-AP者,S-AP者,KS-AP者が,どの活動でフローに入っているときに最も心理的well-beingが高いのかを明らかにすることが出来るだろう。  



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