2.音楽について
2−5. 音楽による感情喚起
Hevner(1937)や Rigg(1940)によって行われた研究では,長調は明るく楽しい,短調は暗く悲しい印象をもたらすことが示されている.また,人が音楽から感じる感情は安定して
おり,短調を聞くと悲しい印象等,誰に聞いても同じように答えることも示されている.
山崎(2009)は,「喜び」「楽しみ」は速いテンポで表され,「悲しみ」はゆっくりとした
テンポで表されると述べている.つまり,音楽を聴く事で,「喜び」や「楽しみ」という感
情を生起させることができるのではないかと考えられる.これらのように感情を喚起さ
せることができるのであれば,ポジティブ感情を高めることに繋がると考えられる.それ
について,辛島・西口(2012)は,作業前に音楽聴取を行うことで,作業者のポジティブな感
情状態が高められるということを示している.このことから,音楽を聴くことでポジティ
ブ感情が生起されることが示されている.しかしながら,どんな音楽であってもポジティ
ブな感情が生起されるということはなく,宮崎・堀内・大江(2019)は,好みのモーツァルト
の曲を聴取した人は音楽なしの人よりも音楽聴取後に肯定的感情を経験したという結果
を示している.つまり,ポジティブ感情を喚起させるためには,音楽を聴く人の好みの曲を
聴く事が重要であり,不快感をもたらす曲ではポジティブ感情は喚起されない.篠原
(2006)は,モーツァルトの高音の多い曲であれば不快感を示す人が少ないと述べている.
不快感を与えない音楽であり,ある程度好みの音楽であればポジティブな感情が生起さ
れると考えられる.
さらに,坂田・平柳・山本・岡沢(1986)は縄跳び運動を課題とし,BGM が運動パフォー
マンスに及ぼす影響について検討したが,誰にでも等しく効果があるとは言い切れない
と示した.これは,人によって音楽の影響のされやすさに差があるということである.この
音楽に影響されやすさには,パーソナリティによる影響があると考えられる.しかしなが
ら,影響されやすいパーソナリティについて言及されている論文はあまり目にしない.
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