2.音楽について
2-1. BGM の定義
私たちは日常生活の中で音楽を耳にしない日が無いのではないだろうか.ショッピン
グモールやカフェなど多くのところで音楽を耳にする.これらは BGM(Back Ground
Music)といい,背景音楽のことである.BGM は環境要因と捉えられ,音楽を聴く事を目的
としておらず,目的は別にありその背景で流れている音楽のことである.河合(2007)
は,BGM のことを背景としての音楽であり,映像や対話場面での背景音のように,その場
面の作業と直接関わりのない音楽だと述べている.本研究ではこの BGM という音楽に着
目する.BGMについての論文で,使用されている場面として想定されるのはカフェやレス
トラン・スーパーやショッピングモール等である.
2−2. 音楽と行動の結びつき
音楽を聴きながら家事や勉強をする人が多く,これによってやる気がでたり,集中でき
たりすることがあることから,BGMは様々な行動に影響するのではないだろうか.音楽と
行動の結びつきに関して North,Hargreaves & McKendrick(1997)はワイン売り場での
音楽による消費者の行動の違いを述べている.その実験では,フランスワインとドイツワ
インを並列したところに,フランス風の音楽,ドイツ風の音楽をそれぞれの被験者に聞か
せている.その結果,フランス風の音楽を流すとフランスワインの方がよく売れ,逆にドイ
ツ風の音楽を流すとドイツワインの方が売れることが示された.また Hallam, Price &
Katsarou(2002)は,小学生を対象とし,算数の授業で音楽を流す実験を行った.その結果,鎮静的な音楽は過剰な覚醒をさせないことで子どもの集中力を高める可能性があること
を発見した.また,Smith(1947)は工場のラインにおける生産性に与える影響を調査し,音
楽が 4~25%の向上をもたらし,生産性が落ちる時間帯により強く働くことを発見した.こ
れらのことから,音楽は作業に良い影響を与えるということが考えられる.
しかし,門間・本多(2010)は,歌詞の有無によって文章課題に差が出るのかについて検討しており,韓国語の歌詞や歌詞なし,または日本語歌詞が含まれている歌を聴きながら文章課題を行うと,日本語歌詞あるときのみ課題の成績が下がったことが示された.これについては言語を理解出来てしまうことで誤答率が高くなり,成績が悪くなるということ
が考察されている.さらに浅羽・星・安達(2017)は,歌詞の有無だけでなくストーリー性がある音楽を聴くと,言語的な思考の邪魔をしてしまうと述べている.このことから,歌詞の
ある音楽は行動に悪い影響を与えていることが考えられる.そのため,言語の無い音楽は
作業に対して効率を上げるための要因となり得ることが分かる.
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