2.現在の日本の海について
現在の日本に住む日本人にとって海とはどのような存在なのだろうか。
海に関する国民意識調査2014」(日本海事センター,2014)では,「海が好き」と回答した人は69.9%であり,7割近くの多くの日本人は海が好きだといえる。海が好きな理由としては,「落ち着く/癒される/安らぐ/心が和む/リラックスできる/安心感がある」という回答が最も多く得られている。
一方で,日本人の海のイメージに関する調査「海辺ニーズに関する意識調査」(内閣府, 2000)によると,海辺に行く者の目的としては,「海水浴などの海辺のレクリエーションを行うため」が50.7%と最も高く,以下,「魚釣りをするため」(22.8%),「海辺のドライブを楽しむため」(21.6%),「海辺の風景,名所旧跡や水族館などを観るため」(20.6%)と続いた。現在の海へは,娯楽目的で訪れる割合が高いといえる。また,「海辺のイメージ」に関する項目への回答では,「自然のままの砂浜海岸(白砂青松)」という回答が64.3%と最も高く,次いで「大勢の人で混雑する海水浴場」(34.6%),「魚釣り等ができる磯や防波堤」(33.9%)であった。
海の景観の調査として,松原ら(2005)の海岸の写真を用いたアンケート調査では,「雰囲気のよい」と感じる海岸の景観は「自然海岸であること」,「前浜は広い砂浜であること」を挙げている。
以上の「海辺のイメージ」・「雰囲気のよいと感じる海岸」の調査より,現在の日本人にとっての海の景観とは「砂浜」や「自然海岸」を持つ海であると考えられる。
このような海のイメージを持つ現在の日本には,海の観光地が多数存在する。たとえば,和歌山県白浜町の白良浜は,「夏でも冬でも最高の美しさ」とうたわれ年間約60万人が訪れる観光スポットになっている。また,静岡県静岡市の「三保松原」,広島県「鞆公園」,熊本県「不知火および水島」,和歌山県「和歌の浦」,長崎県「三井楽」は,万葉集に関わる海の景観により国の名勝に指定されており,重層的に文化が伝え残されている。他に,京都の天橋立,宮城の松島,広島の宮島は日本三景となっており,江戸時代の初期に「日本国事跡考」で記されて以来,日本の絶景として親しまれている。つまり,海には日本人を惹きつける大きな魅力があると考えられる。
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