考察


 本研究では, 人生において最も後悔した非行為後悔と行為後悔を想起させ, それぞれの出来事について, 後悔した直後や外傷後成長を遂げる前にどのように気そらしや反すうを行ったかについて調査することで, 後悔の意味づけ過程について検討した.

 この目的を踏まえ, 本研究で建てられた仮説は以下の5つであった.

@後悔直後の気分転換的気そらしを行うほど, 外傷後成長前の意図的熟考は促進され,
 侵入的熟考は抑制される.
A後悔を感じた直後に意図的熟考・侵入的熟考を行うほど,
 外傷後成長前の意図的熟考は抑制される.
B後悔を感じた直後に意図的熟考・侵入的熟考を行うほど,
 外傷後成長が抑制される.
C後悔を感じてから数週間以上後, 外傷後成長前の意図的熟考を行うほど,
 外傷後成長は促進され, 侵入的熟考を行うほど外傷後成長は抑制される.
D外傷後成長の促進に関わる気そらしや反すうが, 後悔を低減させる.

1. 非行為後悔の意味づけ過程における後悔直後の気そらしが外傷後成長前の反すうに与える影響


 非行為後悔において, 後悔直後の気そらしが外傷後成長前の反すうにどのような影響を及ぼしているか検討するため, 当時の後悔の大きさを統制変数として共分散構造分析を行った. その結果「当時の後悔」から「外傷後成長前の意図的熟考」へ, 「当時の後悔」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ, 「気分転換的気そらし」から「外傷後成長前の意図的熟考」へ, 「気分転換的気そらし」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ有意な正の影響が見られた. しかし, 「回避的気そらし」から「外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考」への有意なパスは見られなかった.つまり, 非行為後悔を経験した当時の後悔の大きさが大きいほど, 外傷後成長前の意図的熟考の頻度が高くなり, 非行為後悔を経験した直後に気分転換的気そらしを行うほど, 外傷後成長前の意図的熟考の頻度が高くなるということである. よって, 非行為後悔において, 仮説@は一部支持された. また, 非行為後悔を経験した直後に気分転換的気そらしを行うほど, 外傷後成長前の侵入的熟考の頻度が高いという結果になった. これは, 仮説@の一部に反する結果となった. 気分転換的気そらしによる外傷後成長前の意図的熟考や侵入的熟考への正の影響は, 後悔の大きさによって, 反すうが促進されていることと, 大きな後悔に対処するために気分転換的気そらしを積極的に行っていることが考えられるため, 気分転換的気そらしから反すうに対して疑似的に影響があるように見えているということが考えられる. また, 島津・越川(2014)によって, 気落ちしている時, 悲しい時, 憂鬱な時に, とりあえず楽しめることをしたり, 気分を良くするため何かをしたりする人ほど, 将来の抑うつが低いことが明らかにされている.


back/next