考察
2. 非行為後悔の意味づけ過程における後悔直後の反すうが外傷後成長前の反すうに与える影響
後悔を感じた直後, 数週間の間の意図的熟考と侵入的熟考が, 外傷後成長を遂げる直前から数週間前の間の意図的熟考と侵入的熟考に与える影響を検討するため, 共分散構造分析を行った. その結果「後悔直後の意図的熟考」から「外傷後成長前の意図的熟考」へ, 「後悔直後の侵入的熟考」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ有意な正の影響が見られた. しかし, 「後悔直後の意図的熟考」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ, 「後悔直後の侵入的熟考」から「外傷後成長前の意図的熟考」への有意なパスは見られなかった. つまり, 非行為後悔を経験した直後に侵入的熟考を行うほど, 外傷後成長前の侵入的熟考の頻度も高くなるとことである. これは, 仮説Aを一部支持する結果となった. また, 非行為後悔を経験した直後に意図的熟考を行うほど, 外傷後成長前の意図的熟考の頻度も高いということである. これは, 仮説Aの一部と反する結果となった. Joseph,2011(北川訳, 2013); Parkes & Weiss,1983(池辺訳, 1987)が指摘したように, 衝撃の大きな出来事に直面した際は一時的に距離を置き, 体験と向き合う準備をすることが必要な場合がある. 今回は最も後悔した出来事という, 衝撃が大きいであろう出来事について調査したため, 後悔した直後は出来事と一時的に距離を置いた方が, その後の意味づけが促進されるだろうという仮説を立てた. しかし, 本研究においては, 非行為後悔直後の意図的熟考が, 外傷後成長前の意図的熟考を促進していた. これは, 後悔した出来事と一時的に距離を置きながら後悔した直後に無理なく意図的熟考を行えていたか, 後悔した出来事が, 距離を置かなくとも無理なく意図的熟考を行える衝撃であった可能性が考えられる.
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