3.潤滑欺瞞に関する考察
潤滑欺瞞に関して,単純主効果の検定より,日常場面よりゲーム場面の方が,欺瞞行為を行った相手に対する好感度と信頼度,欺瞞行為そのものに対する許容度が有意に低くなることが示された.そのため,ゲーム場面はどのような種類の欺瞞行為であったとしても,許容しやすくなる場面ではないことが示唆された.このような結果となった理由について,日常場面・ゲーム場面それぞれで行われる,具体的な潤滑欺瞞を例に挙げて検討する.
日常場面における潤滑欺瞞は,自分の考えや意見を胸にしまい込み,相手の意見を尊重したり,相手の述べていることを肯定したりするときに見られるものである.そのため,相手のことを慮った「利他的な欺瞞行為」であると捉えることができる.では,ゲーム場面における潤滑欺瞞はどのような行動が当てはまるだろうか.それは,自分の本当の考えや戦略,情報といったものを隠蔽しながら,相手の読み間違いや勘違いによる発言を肯定し,相手を混乱させるように誘導するといった行為であるだろう.このような欺瞞行為は,自分にとっての利益を保持したり不利益を回避したりすることができるだけでなく,相手には適切な行動選択をすることができなくなるといった不利益をもたらす行為であり,「利己的な欺瞞行為」であるといえる.つまり,潤滑欺瞞は日常場面では利他的な側面が表れた欺瞞行為であるが,ゲーム場面になると利己的な側面が表れた欺瞞行為に変化しており,利他的な欺瞞行為と利己的な欺瞞行為では,利他的な欺瞞行為の方が許容されやすいため,日常場面とゲーム場面で比較するとゲーム場面の方が許容されにくいという結果になったことが考えられる.
以上より,ゲーム場面は行為の意図や目的を変化させうる場面であることが考えられる.
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