3.ゲーム場面で見られる行動
では,ゲーム場面と日常場面は具体的にどのような点が異なるのだろうか.これを検討するには,ゲーム場面でよく見られる行動に着目する必要があるだろう.
井上(1977)は具体的なゲームの例として「麻雀」を挙げ,そこで見られる人の様子について述べている.麻雀では,他のプレイヤーがどのような手牌であるかは,こちらからは見えず,捨て牌や自分の手牌などの「見える部分」から「見えない部分」「かくされた部分」を推測する「読み」にもとづいてゲームを進めていく必要があるとしている.そして,プレイヤーが「手がかり」として利用する情報は牌だけに限らず,相手の表情,言葉,動作なども,重要な手がかりとなりうるとしている.また,読まれる側としては,正確に自分の手を読まれてしまっては困るため,相手の読みを混乱させ,誤った方向に導くために,相手に偽の手がかりを与えることで,自分に有利な方向に誘導する「情報操作」を行う姿が見られることを指摘している.
このような,「麻雀」のほかにも「人狼ゲーム」や「ポーカー」といった,勝負に関する情報として手の内が明かされていないゲームのことを「不完全情報ゲーム」と呼ぶ(川又,2012;作田,2003).また,不完全情報ゲームを行っているときには,前述の「情報操作」の他に,手が悪いのに強気に出る「ブラフ」,手が良いのに弱気に見せかける「スロープレイ」を駆使して相手をはめる「欺き」(作田,2003)といった行為が見られ,そのような行為のことを一般に「欺瞞行為」と呼んでおり,本研究ではゲーム中の欺瞞行為がどのように行われ,欺瞞行為を受けた側がどのような心理になるのかということに着目する.
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