【問題と目的】
5.本研究の目的
ここまで述べたことを踏まえ,本研究での目的を整理する。
まず1つ目の目的は,現代の大学生の死に対する態度の構造を検討することである。死に対する態度を測定する尺度と言っても,様々な尺度が存在し,構造もそれぞれで異なっている。そこで,死に対する態度全般を測定するとされている2つの尺度を用いて現代の大学生の死に対する態度の構造を検討することで,現代の大学生が死に対してどのような印象を持っているかを検討することができるだろう。また,今後死に対する態度の研究が行われる際,死に対する態度の構造を検討するべきであると指摘もできるのではないだろうか。
2つ目の目的は,死に対する態度を単純に喚起させることによる効果を,時間的態度と幸せへの動機づけの観点から検討することである。石井(2013)と小正他(2015)の研究結果を比較すると,死ついての課題に取り組んだ期間が違うにもかかわらず,ほぼ同様の結果が得られている。この2つの研究の共通点は,課題によって死に対する態度が喚起されていることと考えられる。そこで,死に対する態度を単純に喚起させることによる効果を検討することで,死について学校教育で取り入れる際の課題量の参考にもなるだろう。
3つ目の目的は,死に対する態度と時間的態度・幸せへの動機づけの関連を検討することである。デーケン(1996)の死別経験による悲嘆のプロセスという視点から,死に対する態度によって時間的態度等の自らの生活への態度が変化しているだろうと予想ができる。また,石井(2013)・小正他(2015)と塩﨑(2016)の研究から,死に対する態度が喚起されているとするならば,死についての課題を取り組んだことによって,死に対する態度が喚起・変化させられ,時間的態度が変化したと考えられる。そこで,死に対する態度が時間的態度・幸せへの動機づけに与える影響を検討することで,死について学校現場等で考える際の目標設定の目安になるのではないだろうか。
以上3つの内容を本研究の目的とする。
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