6. 本研究で扱う場面


 廣岡(1985)では,他者との交互作用が行われる社会的状況を取り上げて,大学生が日常的に遭遇する社会的状況がどういった次元上で認知されているのかを明らかにしている。その結果,状況認知次元として「親密性」,「課題志向性」,「不安」の3次元を見出している。また,廣岡(1990)では,パーソナリティ認知に及ぼす対人場面の効果について検討しており,状況によって魅力を規定する認知次元が異なることを示している。状況によって魅力を感じる人物像が異なるということから,状況によって期待される人物像が異なることが考えられる。吉田・高井(2008)は親密性,課題志向性,不安のそれぞれの次元が顕著に期待される状況の抽出を試みている。その中で,廣岡(1985)の命名した3次元について,先行研究を踏まえて,性格特性5因子の中で調和性,誠実性,情緒安定性の3因子に対応させている。この3因子がどの状況で顕著に期待されているかを検討した結果,調和性期待場面として好きな人といる場面,雑談場面が適しており,誠実性期待場面として講義場面が適していることが示された。本研究では,吉田・高井(2008)に基づいて,期待される人物像が弁別できる場面として,調和性期待場面は雑談場面,誠実性期待場面は講義場面を用いて検討していくこととする。



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