4.本研究の目的


  ここまで述べたことを踏まえ,本研究での目的を整理する。  まず1つ目の目的は,自称詞への意味づけに男女差があるかを明らかにすることである。男女では自称詞の使用の様相は異なっているため,その意味づけも異なることが予想される。  2つ目の目的は,大学生における1番よく使用する自称詞が公的な者と私的な者の大人になることへの意識の違いを明らかにすることである。公的な自称詞使用者は,公的な自称詞を使用することが「大人になる」ということを意識させ,大人になることに意欲的になりつつも,プレッシャーから不安や嫌悪を生むことが予測される。また自身の大人度も公的な自称詞を使用している者の方が「本当に大人になれるだろうか」と懐疑的になり,より低く設定されるのではないだろうか。 3つ目の目的は,自称詞への意味づけと大学生と社会人という立場が大人になることへの意識に影響しているのかを明らかにすることである。大学生は社会人よりも比較的自由に自称詞を使用することができると予測される。そのため,自身の最も使用したい自称詞は,私的な自称詞の者が多いのではないだろうか。その最頻の自称詞に強く意味づけを行っている者ほど大人になることを意識しておらず,大人になることへの意識は低いのではないだろうか。一方社会人は大学生よりも公的な場に身を置く時間が長いため,使用頻度の高い自称詞ほど公的なものであると予測される。自由に自称詞を使用することができないため最頻の自称詞に重要性は感じないが,公的な自称詞を使用しているということが大人になったという意識を増大させ,自身を大人であると認識しやすくなるのではないだろうか。 4つ目の目的は,どの集団に所属していることが自称詞を使い分けることに影響し,大人になることへの意識と関連しているのかを明らかにすることである。大学生の所属する集団は多様で,個人によってその所属の有無は異なる。さらに、集団内には様々な立場の人物が所属しており,所属する集団によっても個人が自称詞を使い分けることが予測される。よって所属する集団によって大人になることへの意識に違いが生まれると考えられる。



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