2.セクシュアル・マイノリティの概念
2. セクシュアル・マイノリティの概念
葛西(2011)や羽入(2017)によると,人間の性にはいくつかの側面があるとされる。その中で,大きく取り上げられるものとしては4つある。まず一つ目は身体的性別(sex)である。これは身体機能における性別のことであり,女性器,男性器に分かれる。二つ目は性自認(Gender Identity)である。これは,「自分は男である」「自分は女である」「自分は男でも女でもない」といった自己の性別認識である。三つ目は社会的性役割(Gender role)である。これは「女らしく」「男らしく」等と社会文化的に作られた性役割のことである。最後に性指向(Sexual Orientation)がある。これは,性的欲望や恋愛感情の対象が何であるかということである。多くの場合,身体の性と性自認が一致しており,性的欲望や恋愛感情の対象が異性に向いている状態である。性のあり方がこの組み合わせ以外の人をセクシュアル・マイノリティと呼ぶ。心の性と性指向が一致する場合を同性愛と呼び,男性同性愛者のことをゲイ,女性同性愛者のことをレズビアンと呼ぶ。また,性指向が両性に向く場合をバイセクシュアルと呼ぶ。これらは頭文字をとってLGBと略される。多くの人は性自認(自分のことを男性と思うか女性と思うか)が生物学的性(身体上の性別)と一致するが,そうではない人もいる。このように,身体上の性別に違和を覚える人をトランスジェンダーという。これと併せてセクシュアル・マイノリティを LGBT と表記することがしばしばある(古長,2016)。本研究においては同性愛の定義を和田(2010),古長(2016)に倣い,「性指向が異性ではなく,同性に向いていること」とする。
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