3. 同性愛に関する心理的分野の研究


3. 同性愛に関する心理的分野の研究

 同性愛に関する心理的分野の研究では,異性愛者の,同性愛者に対する態度を取り扱ったものが多い。和田(1996)は青年の同性愛に対する同性愛に対する態度測定を目的とする尺度を開発し,「社会的容認度」「心理的距離感」「ポジティブイメージ度」の3つの因子構造を見出している。宮澤・福富(2008)もゲイまたはレズビアンに対する態度の因子分析において「社会的認知」因子と「心理的距離」因子という,和田と類似した因子を抽出している。「社会的容認度」と「社会的認知」の項目を見ると,「同性愛が存在するのは当然だ」「ゲイ/レズビアンの人権を国がもっと擁護すべきだ」などといった項目がある。一方,「心理的距離感」と「心理的距離」では,「同性愛者と共同生活(寮など)を送ることができる」や「ゲイ/レズビアンと行動を共にすることができる」などの項目が見られる。古長(2016)はこれらの因子を,前者を「社会的受容感」,後者を「個人的受容感」と定義し,受容感に焦点づけた研究の意義を指摘している。前者は「同性愛者という存在や概念を社会の中で受容できる」という感覚であり,後者は「同性愛者という個人を身近に想定した場合でもその存在を受容できる」という感覚であるとした。古長(2016)によれば,この2つの受容感は,和田(1996)や宮澤・福富(2008)の先行研究においてそれぞれ別の因子として抽出されたように,受容感の異なる側面を表しており,同性愛者の受容を考える際には,少なくともこの2種類の受容感のあり方を想定する必要がある。

 これまでの先行研究では,同性愛者に対する態度を広く捉えようとするものが多く,受容感に焦点づけられてはこなかった。しかしながら,同性愛者を受け入れていこうとする社会的流れが生まれている現在においては,この受容感が大きな意味を持つと考えられる。従って,同性愛者に対する受容感に焦点づけた研究を行う中で,同性愛者がどのように受け入れられ,その違いは何であるのかを考察していくことには意義があると考えられる。



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