1.はじめに


 2020年に流行した,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により人々は普段通りの生活を送ることができなくなっている。2020年3月には小中高等学校に対して突然の休業要請が出され,4月には政府が緊急事態宣言を発出し,3月から約3ヶ月間,学校は休校状態となった。その後も,一時的に感染者数は減ったものの,感染は拡大し続け,秋口に第2波,年末にかけて第3波と,感染拡大は続いている。この間,密閉・密集・密接の「3密」を避けるために会食やイベントの開催等の自粛が求められ,5月には厚生労働省から「新しい生活様式」(厚生労働省,2020)が提示され,そのなかに在宅勤務によるテレワークの推奨が示された。様々な制限が求められる中,その対象として多くの人が集まる学校も例外ではなかった。
 
文部科学省は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために,大学・大学院・高専に対して「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」(文部科学省,2020)を出し,「遠隔授業の活用」として「Tテレビ会議システムを用いた遠隔授業」「Uオンライン教材を用いた授業の活用」を提言した。その結果,ほぼすべて(96.6%)の大学等で実施又は検討する方針となった。コロナ状況下で多くの大学が対面授業をやめ,いわゆる「オンライン授業」すなわちeラーニングによる授業を実施しているといえる。

 本研究では,2020年度において図らずも対面での授業の代わりにオンライン授業が行われている状況を鑑み,この状況における大学の授業の在り方について検討する。

 ところで,林(2012)は「教育・学習にICT(Information and Communication Technologies)を用いて,その効率や効果を高めるもの」をeラーニングととらえている。また野嶋・鈴木・吉田(2006)は,eラーニングを学習形態によって非同期型および同期型のeラーニングと定義した。 非同期型のeラーニングとは,インターネットにより教材を配信する形態で,オンデマンド型と呼ばれることもある。学習者の都合の良い時間帯・場所で学習することができる。一方で,同期型のeラーニングとは,講師が行う授業を衛星通信やテレビ会議システムを使って,リアルタイムで遠隔地に配信する形態である。受講時間が決められているが,その場で質問できるといった長所がある。
 すなわち,同期型のeラーニングにおいては,リアルタイムでの配信であるため学校にて本来対面で受ける授業と同じ内容(厳密には同じではない場合も多いはず)であるが,学生は「外出自粛」および「登学禁止」によって自宅にて1人で受講する状況であり,集中しやすい環境と感じることもあろうが,一方で,わからない点があってもすぐに友人に相談できず不安に感じることも考えられ,他者との直接的な接触がないこのコロナ禍の状況をネガティブに捉えている学生が多いと予想する。
 そういう意味で,個人によって授業に対する受容度は異なると考えられる。


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