居場所感


1.8 居場所感尺度

 居場所感を測定する際、尺度としては、杉本他(2006)の居場所の心理的機能を測定する尺度や石本(2010)の居場所感尺度が挙げられる。杉本他(2006)は調査対象者にとっての居場所と何故そこを「居場所」だと感じるかという理由を、調査対象者に自由記述させ調査し、「居場所」だと感じる理由をもとに、居場所の心理的機能を測定する尺度を作成した。研究から居場所の心理的機能が「被受容感」、「思考・内省」、「自己肯定感」、「他者からの自由」から成ることを明らかにした。このことに関して石本(2010)は理由と機能は必ず一致せず、この尺度が機能を十分に捉えているとは言い難いと指摘している。つまり、「居場所」が表す内容が曖昧で多様であるということである。本研究で用いる居場所感尺度(石本,2010)は、自分が必要とされていると思える、役に立って思えるといった内容を表す“自己有用感因子”、ありのままでいられる、自分らしくいられるといった内容を表す“本来感因子”の2因子で構成されている。この尺度は高い信頼性と一定程度の妥当性が確認されていて、広く一般的な概念である居場所感をより捉えることができるものであり、教育臨床や心理臨床の領域に対して、有効な貢献ができているといえる。本研究ではアサーションと居場所感の関連性について研究するが、アサーションが自己表現に関係する概念で人と関わるものである点や、アサーション・トレーニングが教育現場で使われている点を考えると、他者との関係に対する意味づけを居場所の心理的条件とし、作成した石本(2010)の尺度を用いることは妥当である。



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