結果
大学生を対象にWeb調査を実施した。有効回答数は,145名(男性:65名,女性80名)であった。調査対象者の平均年齢は19.50歳,標準偏差は1.405であった。
1.各記述統計量について
大学生を対象にWeb調査を実施した。有効回答数は,145名(男性:65名,女性80名)であった。調査対象者の平均年齢は19.50歳,標準偏差は1.405であった。
5-2.罪悪感についての性差
罪悪感の性差については,女性は男性に比べて,高い共感性を有しており他人への思いやりに関心があることから,犯罪行為からマナー違反,個人的規範逸脱まで幅広い状況で罪悪感を喚起しやすいことが明らかになっている(Hoffman, 1997)。また,石川・内山(2002)では,男子青年と女子青年では情動的・認知的共感性と罪悪感とも関連に違いがあることが示されている。すなわち男性が「個の確立」を重視するのに対し,女性は「関係性の維持」を重視するという,方向性の違いがあることが指摘されている。またGilligan(1982)は,男性と女性の道徳性は質的に異なっており,男性の道徳性が分離志向の強い「正義の道徳」であるのに対し,女性の道徳性は関係志向の強い「配慮と責任の道徳」であるとしている。このことから10~20代の中でも男性は自己の規範意識に基づいて行動している傾向にあり,女性は自身の基準と周囲との関係や周りの人の行動とで折り合いをつけて行動を決定するもしくは,どちらかを優先して行動すると考えられる。また,谷(2010)によると,公共場面での迷惑行為に対して,男女ともに他者の感情体験に対して感情移入したりする傾向が高いほど,罪悪感を喚起しやすい傾向に見られた。また,男性では他者の視点に立って気持ちや状況を想像しようとする傾向が高いほど罪悪感を喚起しやすいことが示されている。女性は「関係性の維持」を重視する傾向にあるが,公共場面で出会う一般的他者は関係性を維持すべき対象とならないため男性よりも罪悪感を感じづらいことが示されている。
コロナ禍においてマスクの着用や,手指消毒などの感染対策は,現状の日本社会では当たり前のマナーという認識になっており,特定の誰かのために特別に行うものという意識を持ちづらい一方で,もし感染対策をしていないと自身の周囲の人から異端者のように見られて,関係性にヒビを入れることにもつながると考えられる。男女によって罪悪感の感じ方にどのような差があるのかを考察していくことで,男性,女性がそれぞれコロナ禍をどのくらい身近に感じているのかも調査していく。
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