6.対象設定の理由
本研究では,中学生を対象に設定した。
中学生を対象とした理由は,強みについて理解できる年齢ではあるが,強みを発揮できていたとしても,それを自覚する機会はあまりないと考えたからである。実際,阿部他(2019)は,小学生よりも中学生の方が自己の強みへの注目が低く,年齢が上がるにつれて子どもは自分の強みに目を向けることが難しくなると指摘している。
内閣府の「子供・若者の意識に関する調査」(2019)によると,「いまの自分自身に満足している」について,13~14 歳では,「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」が51.5%,「どちらかといえば当てはまらない」,「あてはまらない」が 48.5%と回答が割れていることが分かる。これより,中学生の時期は,今の自分に満足している生徒もいれば,満足していない生徒もいるように,他者への関心も高まる中で,自分とは何かと模索する多感な時期であるため.自分を見つめ直す機会になればと考えたからである。
中学校における本来感の育成について,折笠・庄司(2012)は,学級適応にも肯定的な影響を及ぼす可能性を明らかにしている。また,青年期における自己受容の検討を行った
伊藤(1989)は,自己概念の再考性が行われる青年期において,自己受容の低下や不安定性は,青年すべてが通るべき 1 プロセスであると主張している。
これより,強み介入を通して,自分の良いところに気づき,自分を見つめ直すことは中学生にとって重要であると言える。そして,中学生にとって自分らしさを大切に思い,自
分の良さを発揮することは,充実した学校生活を送ることにつながると考える。さらに,中学生だけでなく,生徒たちの本来感,自己受容を高めるために,生徒たちを取り巻く人たちが,どのような声かけや関わり方をしていくとよいのかについて考えるきっかけにもなると考える。
以上を踏まえ,本研究では中学生を対象に,強み介入を実施することとした。
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