3.不本意入学


3-1.大学受験

大学受験の方式として,一般入試,学校推薦選抜,総合型選抜(AO入試)があり,一般入試では大学入学共通テスト(前大学入試センター試験)と2次試験が存在する。竹内(2014)は不本意入学者を生み出す構造として大学入試に着目している。大学入試の変遷として,「統一試験政策」と「多様化政策」を上げており,前者は1979年からの「共通一次試験」,1990年からの「大学入試センター試験」の一般入試を指し,後者は文部科学省が1967年から容認したAO入試等の一般入試以外の方式を指す。現在は,大学入試センター試験が受験大学の合否を大きく左右する試験として受験生に多大な影響を与えているとしている。つまり,受験生にとって,1年に1度しかない大学入試センター試験によって合否が変わり第一志望の大学に行けるかが左右される。大学受験から大学入学までの過程に,センター試験以前に志望校を決定し勉強に励み,大学入試センター試験の点数から志望大学を受けることを決めたり,受験大学を変更したり,受験学部を変更したりするといった様々なプロセスが想定される。また,その際大学入試センター試験までに受験や志望校に対する気持ちの変化や受験に対する自らの状況の変化があり,その後においても受験や志望校に対する気持ちや考えの変化が起きることが考えられる。


3-2.不本意入学者

山田(2006)は不本意入学を「意にそぐわない大学に入学したこと」とし,不本意入学と不適応感の関連について明らかにしている。本研究では,先行研究を踏まえ不本意入学を「第一志望ではない大学・学部・学科への入学」と定義する。神林(2014)によると,不本意入学者は⑴第一志望不合格型⑵合格優先型⑶就職優先型⑷家庭の事情型⑸学歴目的型の5タイプに分類される。また,不本意入学者は⑴出身高校が進学校である⑵勉強面での不安は小さいが大学適応・進路達成に不安を抱えている⑶友人関係の構築をあまり重視せず,自身の進路に関心が高いという特徴が挙げられる。

第一志望ではない大学に入学する理由は人により様々であるが,第一志望不合格型の割合が高く,志望する大学より偏差値が低い大学に通うことから大学に馴染めるのか,就職はどうなるかという不安を抱えて入学する者が多いと考えられる。

また,宮田(2015)は不本意入学がその後に人生に与える影響を検討し,大学受験に対して合否に関係なく成功体験であると認知すると,入学後の学生生活や性格形成にプラスの影響を与えること明らかにしている。また,後の人生において不本意入学が原因で,劣等感や学歴コンプレックス,勉強したいという気持ちを数十年にわたって引きずるなど,大学生活,仕事,恋愛・結婚,育児に影響することを明らかにしている。

このことから,自らの大学受験に対しどのように認知しているかが学生生活において重要であるといえる。また,不本意入学という経験が人生に継続的に影響を与えていることが考えられ,不本意入学という経験をうまく乗り越え大学に適応していく必要があるといえる。



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