5.考察


5-2.wheel 型構造における上下関係の有無による満足度の違い

wheel 型のコミュニケーション構造において、メンバー間の上下関係の有無によって満足度が異なるのか検討するため、対応のない t 検定を行った。その結果、メンバーの間に上下関係がないグループの方が上下関係があるグループよりも満足度が高くなることが分かった。

上下関係が無いグループが上下関係があるグループよりも有意に満足度が高かったのが、項目 5「一緒に話していて楽しいと感じられる程度」、項目 6「一緒に話していて気を遣わず、互いに素を出せる程度」など第 1 因子の項目で結果が出ている。グループの中に先生や先輩がいると、目上の人に気を遣いながらコミュニケーションを取ることになるだろう。後輩がいる場合でも同学年のみの場合と比べると、年下だからこそ意外と気を遣う場面は多い。つまり、メンバー間に上下関係が無い場合が最も気軽にグループを作ってコミュニケーションを取ることができるだろう。そのため、冗談を言い合えたり素を出すことができるので、上下関係が無いグループの満足度が高くなったのではないかと考えられる。第 2 因子「関係距離満足」や第 3 因子「自他尊重満足」では上下関係の有無による差はほとんど見られない。相手とより近い関係性を求めたり、お互いに傷つけないように配慮しあったりすることは、メンバーの間に上下関係があっても無くても変わらないということだろう。

ただし、wheel 型において「上下関係がある」と答えた人は 29 人であるのに対して、「上下関係がない」と答えた人は 78 人であったため、wheel 型であっても「上下関係がない」とした人の方がかなり多く、データの数に偏りがある点には注意しなければならない。インフォーマルグループの場合は、LINE でのやり取り上は wheel 型としてのコミュニケーション構造を有していても、実際の人間関係上では顕著な上下関係があるとは言えないという関係が多いと推測される。あるいは実際には特段の上下関係はないなかで、LINE のグループになると発言が多い人を中心にしたコミュニケーション構造が生まれているということかもしれない。

comcon 型のグループでは「メンバーの間に上下関係がない」と答えた人が 90%以上とほとんどだったため、上下関係についての検討は wheel 型のみ行った。

back/next