結果
対人葛藤方略スタイル尺度の信頼性の検討
まず,平均値と標準偏差を算出し,得点分布を確認したところ,項目6「お互いの利益になるような決定をする」,項目7「お互いに満足するような結論を導き出そうとする」,項目10「最良の結果が得られるように,お互いの考えを理解する」,項目18「相手の考えを認める」で天井効果が認められた。しかし,尺度の内容において必要であると判断したため除外せずに,すべての質問項目を分析対象とした。
次に,各20項目に対し,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。因子負荷量の低くかつ信頼性に影響の与える項目3と項目8とを削除した各18項目に対し,再度,因子分析を行った(Table1参照)。
第一因子の項目18と項目15に関して,加藤(2003)はそれぞれ第四因子,第五因子として分類している。そのため加藤に倣い,第一因子を項目6,7,10,9からなる「統合」 ,第二因子を項目5,13,14,20からなる「強制」,第三因子を項目11,16,19からなる「回避」,第四因子を項目2,4,17,18からなる「自己譲歩」,第五因子を項目1,12,15からなる「相互妥協」と命名した。
そして,下位尺度間の信頼性係数(Cronbachのα係数)と相関分析をTable2に示した。
因子間の相関では,自己譲歩と相互妥協との間(r=.156),統合と自己譲歩との間(r=.234),強制と自己譲歩との間(r=.340)に弱い相関がみられ,統合と相互妥協との間(r=.523)に中程度の相関がみられた。また,強制と回避との間(r=-.314)に負の相関がみられた(Table2参照)。
本尺度を対人葛藤方略スタイル尺度として,以降の分析に用いる。因子ごとの項目数が異なるために,下位尺度得点は平均値で出した。
恋愛経験の有無と恋愛志向性の違いが異性との対人葛藤対処方略の選択に及ぼす影響の検討
恋愛経験の有無と恋愛志向性の各群の人数をクロス集計表にまとめた(Table3参照)。
恋愛経験の有無と恋愛志向性の違いが対処方略の選択に及ぼす影響を検討するため,対人葛藤方略スタイルの各因子と恋愛経験の有無,恋愛志向性との二要因の分散分析を行った(Table4参照)。
統合スタイルでは,恋愛経験の有無と恋愛志向性においての有意な交互作用がみられなかった(F(1,167)=.327,p≦.568)。恋愛経験の有無(F(1,167)=.897, p≦.345)と恋愛志向性(F(1,167)=1.053,p ≦.306)の主効果の有意差は見られなかった。
回避スタイルでは,恋愛経験の有無と恋愛志向性においての有意な交互作用がみられなかった(F(1,167)=2.237,p≦.137)。恋愛経験の有無(F(1,167)=1.159,p≦.283)と恋愛志向性( F(1,167)=.948,p≦.332)の主効果の有意差は見られなかった。
強制スタイルでは,恋愛経験の有無と恋愛志向性においての有意な交互作用がみられなかった(F(1,167)=.001,p≦.972)。恋愛経験の有無(F(1,167)=.641,p≦.424)と恋愛志向性( F(1,167)=.004,p≦.951)の主効果の有意差は見られなかった。
自己譲歩スタイルでは,恋愛経験の有無と恋愛志向性においての有意な交互作用がみられなかった(F(1,167)=.207,p≦1.606)。恋愛経験の有無(F(1,167)=.882,p≦.349)と恋愛志向性( F(1,167)=4.4504,p ≦.035)の主効果において,恋愛志向性の主効果が5%水準で有意差がみられ,「欲しい」群が「不要」群よりも値が大きかった。
相互妥協スタイルでは,恋愛経験の有無と恋愛志向性においての5%水準で有意な交互作用がみられた(F(1,167)=5.388,p≦.021)。そこで,単純主効果の分析を行った。その結果,恋愛経験の有無の「あり」群において恋人志向性の単純主効果が有意( F(1,167)=12.723,p <.001)であり,恋人を欲しいと思わない群が有意に大きな値を示し,恋愛志向性の「不要」群において,恋愛経験の有無の単純主効果が有意( F(1,167)=6.662,p≦.011)であり,恋人経験の有無の「欲しい」群が有意に大きい値を示した。
葛藤相手(異性)との関係性の違いが対人葛藤方略選択に及ぼす影響を検討
葛藤相手(異性)との関係性の違いが対人葛藤方略選択に及ぼす影響を検討するため,対人葛藤方略スタイルの各因子を従属変数として,想定相手(恋人,恋人以上友人未満,友人)の一要因分散分析を行った(Table5参照)。有意な結果は得られなかった。