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今後の検討課題


 本研究では,怒り感情に対するネガティブな認識の変容を促すためのアンガーマネジメントプログラムの実施が、自尊感情と怒りに対する認識に与える影響について検討した。本研究の今後の課題として以下の3点を挙げる。

 まず1点目は,ロールレタリングの実施回数についてである。本研究では調査の際にプログラムを実施したが,1往復のロールレタリングの実施によるプログラムの効果を検討した調査であった。岡本(2003)によると,ロールレタリングでは回数を重ねることがより効果的であるとされている。春口(1995)において,ロールレタリングは文章による感情の明確化を促進する効用や他者の視点の獲得する効用を持つことが述べられており,回数を重ねることで,より自分の感情を明確にし,かつ明確な相手の視点を経験することが出来ると考えられる。よって複数回に渡ってロールレタリングを実施し,プログラムの効果を検討する必要があるだろう。

 2点目として,過剰適応傾向の点からプログラムの検討を行えていないことが挙げられる。本研究は,随伴性自尊感情が高く本来感が低い過剰適応的な自尊感情の傾向を持ち,怒りを溜め込む傾向を持つ人に対してプログラムが効果的であるかの検討を目的としていたが,今回は授業等でプログラムの実施を行ったため,様々な自尊感情の傾向を持ち,様々な怒り表出の傾向を持つ参加者が存在した。そのため,過剰適応的な自尊感情の傾向を持たず怒りを溜め込まない,比較的健康的な参加者に対して予防的なプログラムとしての効果があることが明かとなったが,本研究の目的に当てはまる参加者は少人数となってしまった。ここから過剰適応傾向を持つ人に焦点を絞って,本研究のプログラムが効果を発揮するか検討を行う必要がある。

 3点目として,手紙の記述内容の分類についてである。本研究では往信内容でどのような内容を記述しているかによって群分けを行い,プログラムの効果の検討を行ったが,プログラムの効果が高かった参加者の記述内容を抽出した際,誰に対して手紙を出したか,返信でどのように内容を記述していたかということが認識の変化が起こった要因として挙げられることが推測された。よって往信の内容についても群分けを行い,プログラムの効果の検討行い,プログラムの特徴を探る必要がある。

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