￿

考察➁


3.プログラムの効果が大きかった参加者に関して

3-1.他者懸念への効果
 アンガーマネジメントプログラムの他者懸念への効果が大きかった参加者の記述を抽出した結果,「実際には自分が考えているよりも相手はそこまで深く考えていないのではないか」,「実際に怒りを表出しても相手から受け入れてもらえそうだ」,「実際に怒りを表出しても相手の気分は悪くならず,ネガティブなことは起こらないのではないか」という省察がなされたと推測した。この省察によって「怒りを感じることは悪いことだ」という対人関係においての怒りに対するネガティブな認識が変化したのではないかと考えられる。つまりロールレタリングの返信において怒りに対する軽い返信,怒りを受け入れられる返信,対人関係で平和が保たれる返信内容を引き出すことで,他者懸念における高い効果を発揮することが出来るのではないかと考えられる。

3-2.必要性への効果
 アンガーマネジメントプログラムの必要性への効果が大きかった参加者の記述を抽出した結果,「自分に負い目があること,立場などの理由から怒りを伝えづらい相手にも,実際に怒りを伝えれば受け入れてもらうことが出来るのではないか」,「怒りを感じた後にお互いを思いやることが出来れば理解を深めることが出来るのではないか」,「相手に対する怒りは当然であり,我慢する必要はないのではないか」という省察がなされたと推測した。この省察が要因となり「怒りは伝えても意味がない」「怒りは我慢するべきである」という認識から「怒りを感じることは必要である」と怒りに対する認識が変化したのではないかと考えられる。つまりロールレタリングの返信において,立場上怒りを伝えにくい相手に受け入れてもらう返信を引き出すことや,ロールレタリングを終えて,怒りを伝えた後について考えることが出来る機会,怒り感情を持つことは当たり前であると考えることが出来る機会を設けることで,必要性における高い効果を発揮することが出来るのではないかと考えられる。
 

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