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7.プロセスレコード


 Peplau,Hildegard E.(1952 稲沢訳1964)によると,プロセスレコードはヒルデガルト・ペプロウによって提唱された,看護現場における患者と看護者の相互関係,相互作用を記した記録のことを言う。中山(2020)によると,プロセスレコード初期の記録形式は「患者の反応」と「ナースの反応」のみの記録であったが,その後, I. J. Orlando(1972)は「患者に関して知覚したこと」,「患者に関して知覚したことと考えたこと,感じたこと」,「患者に対して言ったこと,おこなったこと」の三項目とし,最終的に,看護者がある事象の後に,内省的な観察を加えて記述する記録形式へと変化した。つまり,プロセスレコードは,ある場面において自分と相手との相互関係の過程を,相手のとった行動,相手に対しての思考,相手に対して実際にとった言動の観点から記録をし,省察を行うのに役立つものである。プロセスレコードは看護実践において使用するために作成されたものであるが,山口(2005)は,教育実習の場面においてプロセスレコードの導入についての研究を行っている。人間の生成とケアにかかわるという点で教育学と近接関係にある看護学の知見からヒントを得ることが出来るとし,プロセスレコードの記録の指導という点と患者と看護者という一対一の関係と,生徒と教師という大人数対一人の関係の違いがある点を課題として挙げているが,生徒との相互作用を振り返り自己省察が出来るという点において教育現場での使用は良い試みであることを示した。そして,筆者は看護実践や教育現場だけでなく,個人においてプロセスレコードを使用することも有効的であるのではないかと考えた。プロセスレコードは,ある場面においての相手との相互作用を過程で振り返ることが出来,また自己省察を行うことが出来る。ここから,自分が相手と接している際に,相手の言動に対してどのように考えているのか,どのような言動をとっているのかを振り返ることで,自己理解を深めることが出来ると考える。怒りの場面においては,相手がとった言動に対してどのように怒り感情が沸き起こったか,また実際にどのような言動をとっていたか振り返ることが出来,怒り感情を抱いた際の自分を客観的に振り返ることが出来,自分が怒り感情を抱いた際にどのような言動をとっていたか,怒り感情を対してどのように考えていたかなど,怒り感情が湧き上がってきたときの自分の言動や思考の傾向について知ることが出来るのではないかと考える。そこで本研究では個人場面において使用できるプロセスレコードを作成し,怒り感情を抱いた場面について筆記による振り返りを行う。

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