9.本研究の目的
周りに気を使い自分の怒り感情を相手に伝えない傾向を持つ人は,慢性的なストレスを抱え,「キレる」などの不適切な怒り感情表出を行ってしまう問題を引き起こす(竹端,2015)。怒り感情を表出せず,過剰に外的適応行動を取る人は,他者から否定されることや嫌われることを恐れており,「怒りを伝えると嫌われてしまうかもしれない」という不安から「怒りを伝えることは良くない」,「怒りは悪いものだ」,「怒るなんて情けないことだ」というネガティブな認識を持っていることが考えられる。
そこで本研究では,怒りに対するネガティブな認識を変容させるためのアンガーマネジメントプログラムを作成し,怒りに対する認識への効果の検討を行うことを第一の目的とする。
また,過剰な外的適応行動を取ることから,人に合わせることが第一優先となり,ありのままの自分を受け入れることが出来なくなることで本来感が低下する。ここから自尊感情を他者からの評価や反応によって保つようになるため,自尊感情が不安定であるという問題が生じる(益子,2009;益子,2010)。問題解決のために過剰な外的適応行動を緩和する必要があるが,外的適応行動は自尊感情を守るための行動となっているため,外的適応行動を緩和するために,周りに合わせる行動をやめさせ自分の怒りや考えを表出させるようなアンガーマネジメントプログラムを行うことは,自尊感情の崩壊につながり適切ではない(益子,2010)。
そこで本研究では,随伴性自尊感情が高く本来感が低い,自尊感情が不安定である人に対して実践ができるアンガーマネジメントプログラムを作成し,相手に合わせた行動を維持しながら,随伴性自尊感情と本来感を低減させないようにプログラムを実施することを第二の目的とする。
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