結果と考察


2.先延ばし意識特性尺度の因子分析と信頼性係数

 先延ばし意識特性尺度について,本研究で扱った21項目が先行研究で確認されている7因子構造となることを確かめるために, jamovi2.3.18を用いて元の尺度の下位尺度通りに確認的因子分析を行った(Table2)。しかし,適合度指標として,CFI=.849,TLI=.811,SRMR=.105,RMSEA=.081とモデル適合度が低かったため,最尤法,オブリミン回転で7因子を想定して探索的因子分析を行った(Table3)。探索的因子分析の結果に基づいて改めて因子を構成し,再度確認的因子分析を行った(Table4)。修正指数を参考にモデルの修正を行い,項目35を削除した。その結果,適合度はCFI=.947,TLI=.933,SRMR=.065,RMSEA=.049となり十分な値となったためこのモデルを採用した。

 第1因子から第7因子まで,先行研究を参考に命名を行った。第1因子は「先延ばし後の否定的感情」,第2因子は「先延ばし前の否定的感情」,第3因子は「先延ばし中の肯定的感情」,第4因子は「気分の切り替え」,第5因子は「状況の楽観視」,第6因子は「先延ばし中の否定的感情」,第7因子は「計画性」である。本研究結果では先行研究の下位尺度構成とは異なる因子に特定の項目が高い負荷を示した項目が3つあった。項目28の「やるべき課題ができていないことを自覚して,よく落ちこむ」は先行研究では「先延ばし中の否定的感情」を示す因子に高い負荷を示した。しかし項目を読むと,できていないことの自覚が先延ばし後の体験であると理解できるため,その項目も含め,本研究では「先延ばし後の否定的感情」と命名した。また,項目47の「思い切り遊んでしまえば,課題に関するストレスがすっきりする」は先行研究では「気分の切り替え」を示す因子に高い負荷を示した。しかし項目を読むと,思い切り遊んでいる最中の感情であると理解できるため,その項目も含め,本研究では「先延ばし中の肯定的感情」と命名した。そして項目42の「課題をしていなかったことに気づいたときには焦ってしまう」は先行研究では「先延ばし後の否定的感情」を示す因子に高い負荷を示した。しかし項目を読むと,課題をしていなかったことに気づくのは先延ばしの最中であると理解できるため,その項目も含め,本研究では「先延ばし中の否定的感情」と命名した。

 下位尺度ごとに尺度構成を行い,平均値と標準偏差および信頼性係数としてマクドナルドのω係数を求めた(Table5)。その結果,計画性以外はω=.709〜.825となり十分な信頼性が得られた。計画性については.549と十分な信頼性が得られなかったが,先行研究と同様の項目から構成されており,重要な構成要素であると考えられるため,本研究でもそのまま用い,分析を進めた。そのため,より信頼性の高い項目に修正することが今後の課題である。

 









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