3. 学校適応について




 子ども達が日常生活している学校では毎日様々なことが起こっている。その都度,その子たちがその子たちなりに解決しながら過ごしているが,時には自分自身で受け止められなくなり,身体症状を訴えたり不登校傾向によってSOSを発信したりしてくることがある(藤田・香川,2014)。教育心理学領域の論文において,学校適応感は,不登校傾向を示す指標としてよく登場する。三島(2006)は,学校に行きたいという気持ちの強さが,主観的な学校適応状態を反映していると考えた。この「学校適応」という用語は日常でも使われるほど一般的であるが,この学校適応感の定義については,松山・倉智・数藤・宮崎(1984)の概念を援用し,「学校生活や学校での活動に対する満足度や帰属意識などを要因とする児童・生徒の主観的な心理状態」としている。石田(2009)は学校適応感尺度を作成し,中学校2,3年生を対象にして実施した因子分析では”友人に対する親密感や満足感”に関する「友人関係」,”学業に対する意欲関心や授業に対する満足感”に関する「学習関係」,”教師に対する信頼感や満足感”に関する「教師関係」,”学校への帰属意識や満足感”に関する「学校全体」という4つの因子を抽出した。本研究ではその中で「教師関係」に着目し,ほめられるという教師からのポジティブな関わりによって学校適応感にどう影響するか検討する。具体的なポジティブな関わりとして教師からのほめられ経験すなわち,教師から自分の行為や自分という存在が認められたという経験は,教師と子どもの間でのよい人間関係の形成に繋がり,その関係性により学校適応感が上昇するのではないかと考える。

 学校適応感の中でも,本研究では学校に行きたいという気持ちを測定したいため,古市・柴田(2013)が定義した「学校生活が楽しいと思える感情」という「学校享受感」を測定する。古市・柴田(2013)は教師からのほめられ経験が,子どもたちの自尊感情,さらに学習意欲や学校生活享受感情に肯定的な影響を及ぼすと示した。しかし,この研究は小学校5年生および6年生を調査対象としており,低学年や中学年にも同じような結果となるかは明かされていない。したがって本研究では小学校高学年に加え,低学年,中学年を対象に,古市・玉木(1994)の学校享受感尺度を用い,ほめられ経験によって学校生活の楽しさにどのような影響を及ぼすか分析を行うこととする。



back/next