仮説
仮説1:家族機能各下位尺度は愛着スタイル各下位尺度を介して,間接的に獲得的レジリエンス要因に影響を与える。
清水・相良(2019)では,IWMが家族関係を介してレジリエンスに影響を与えるとされているが,本研究では家族機能を用いるので,質問回答者の自己観・他者観が家族の凝集性・適応性へ影響を与えるとは考えにくい。むしろ,家族の雰囲気や状態が家族の一員である質問回答者の自己観・他者観へ影響を与えるのではないかと考える。そして,家族機能からレジリエンスに与える影響としては,直接的なものではなく,家族の雰囲気や機能状態が質問回答者に何らかの影響が与え,そこからレジリエンスへと影響が与えられると考えられる。清水・相良(2019)では,IWMがレジリエンスに影響を与えることが明らかにされており,斎藤(2019)においても安定している愛着スタイルを持つ人はレジリエンスが高いとされている。このことから,家族機能各下位尺度は愛着スタイル各下位尺度を通して,獲得的レジリエンス要因に影響を与えると考えた。
仮説2:見捨てられ不安が高い人は統御力が低く,親密性の回避が高い人は社交性が低い。
平野(2010)は,資質的レジリエンス要因の下位因子に「統御力」,「社交性」があることを示している。統御力は「もともと不安が少なく,ネガティブな感情や生理的な体調に振り回されず,コントロールできる力」とされている。見捨てられ不安の高い人は,自分を低く感じており,見捨てられるのではないかという不安が高いため,統御力が低くなり,資質的レジリエンスも低くなると考えられる。また,社交性は「もともと見知らぬ他者に対する不安や恐怖が少なく,他者との関わりを好み,コミュニケーションをとれる力」とされている。親密性の回避の高い人は他者観が低く,他者に対する信頼や関わろうとする気持ちが薄いため,社交性が低くなり,資質的レジリエンスも低くなると考えられる。
仮説3:家族機能がバランス群である人は,安定した自己観・他者観を持つ。
数井・無藤・園田(1996)は家族の機能が適度に柔軟であることが子どもの愛着の安定性につながるということを明らかにしている。また,家族機能において凝集性・適応性どちらも中程度である場合に家族が最も機能的であるとされているため,見捨てられるのではないかという不安が薄かったり,他者への信頼も家族との関係をもとにうまれたりすることで,愛着が安定していくのではないかと考える。
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