考察
4. 仮説4の検証
仮説4については,笑顔回数,笑顔表出時間,相槌回数,発話回数,発話時間を個人ごとに算出した(Table6, Table7)。その後,実験群・統制群を独立変数,1回目,2回目の各項目(笑顔,相槌,発話)の回数,時間を従属変数として2要因分散分析を行った。
しかし,いずれの交互作用や主効果もみられず,この仮説は支持されなかった。これは,対面で「かわいい」感情が引きおこすふるまいを検討した岡田ら(2020)の結果を支持しない結果となった。
いずれの交互作用や主効果もみられなかった要因として,藤原・大坊(2010)でも指摘があるように表示規則などの社会的な要因が影響した可能性が考えられる。本研究では女性の参加者が多数であったが,女性は一般に相手に合わせてコミュニケーションをする(Tannen, 1990)ことから,自分の感情を直接コミュニケーションに出すのではなく,相手に合わせたコミュニケーションをするべきだと考えたと推測される。
また,本実験は初対面の参加者で行ったため,1回目のディスカッションの様子を基準にして2回目のディスカッションを行った可能性が考えられる。Hall(1978)は女性は対人感受性が高いことを指摘している。その対人感受性の高さから,1回目のディスカッションから突然変わることは違和感を持たれ,好ましくないと判断し,1回目のディスカッションで作り上げたモデルから逸れずに2回目のディスカッションを行った可能性も考えられる。
以上の理由から,「かわいい」感情が喚起されても,それによる行動や表情の表出が抑制されたのではないだろうか。
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