考察


1. 仮説1の検証

 仮説1については,意思疎通度の各下位尺度平均得点を従属変数,実験群・統制群(参加者間)と事前事後(参加者内)を独立変数として,2要因分散分析を行った(Table3)。

 その結果, “相手の意見の理解” に群と事前事後の交互作用がみられ,統制群の2回目の得点が実験群より高くなっていることが見いだされた。“会議の充実度”の事前事後要因には有意な主効果がみられ,実験群,統制群の両群とも2回目の平均値が高かった。

 “会議の充実度”の事前事後要因の主効果については,刺激を見せなかった統制群の“会議の充実度”も実験群と同様に高くなったことから,練習の効果があったと考えられる。

 “相手の意見の理解” の群要因,事前事後の交互作用については,実験群は刺激を見た後の2回目の平均得点が下がり,統制群では2回目の平均得点が高くなったため,この仮説は支持されなかった。

 入戸野(2012)は「The power of kawaii」という論文で「かわいい」と感じると細部に集中し,注意力が高まることを明らかにした。その論文についてのインタビューで,「かわいい」による力を発揮するには,「かわいい」と思う対象との接触時間が重要であると述べている(入戸野,2018)。かわいい動物の動画を例に挙げ,そのような「かわいい」刺激は見ることで気分は良くなるが,長く見すぎてしまうことでダラダラしたり,気が散ることの原因になると言及している。

 本研究では「かわいい」画像の注視時間は1分間であったが,「かわいい」と思う画像を一覧から探している時間を含めると「かわいい」刺激に接触した時間が長かった可能性が考えられる。よって気が散る原因となり,相手の意見をしっかり聞くことに良くない影響を与えたと推察する。



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