5.SNSについて
5−1. SNSについて
SNS とは,ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略である.ユーザーは,個人情報や写真,趣味などを載せたプロフィールを作成し,それをもとに他のユーザーをフォローして投稿を受信して「いいね」やコメントなどのリアクションをしたり,グループを作ってチャットでの会話や,写真や動画を共有したりすることを通してコミュニケーションを図る.実際に対面で会ったことがあるかどうかに関わらず,趣味や思想などによって様々なコミュニティーがオンライン上に作られ,日々盛んな交流が行われている.総務省情報通信政策研究所(2022)によると,令和3年度の主なSNSの利用率は,10代では,LINEが92.2%,Instagram が72.3%,Xが67.4%,20代では,LINEが98.1%,Instagramが78.6%,Xが 78.6%であり,利用時間は,10 代が平日平均64.4 分,休日平均74.2 分,20代が平日平均84.1分,休日平均,114.2分である.このことから,ほとんどの若者がなんらかのSNSを利用していること,毎日多くの時間をSNSの利用に費やしていることが分かる.また,LINE,Instagram,Xの他にも,YouTube,Facebook,TikTokなど様々なSNSがあり,新しいSNSも次々に開発されている.携帯電話や携帯メールが友人関係の活発さと関連があること(松田,2001),女子学生において大学入学時など新しい人間関係を築く際に携帯メールの利用が役立っていること(Igarashi,Takai,& Yoshida, 2005),携帯メールの利用が既存の人間関係の強化に作用すること(小林・池田,2005)などの報告があり,コミュニケーションツールとしてSNSを利用することで人間関係を築いたり,関係を維持したりするのに役立つことがわかる.
5−2. インターネットやSNSの利用動機について
インターネットの利用動機について,西村・遠藤(2009)は高校生に対する調査から「自己表現」,「娯楽的利用」,「メールでの交流」,「知識増大」の4つの因子を得ており,「自己表現」と「メールでの交流」,「娯楽的利用」と「知識増大」がそれぞれ相関が高かったことから,澤井・福岡(2018)は,前者を他者とのコミュニケーション,後者をネット上のコンテンツ消費に対する動機であるとした.また,柏原(2011)はTwitter(現在のX)の利用動機について「自己表現動機」,「既存関係維持動機」,「実況/情報探索動機」,「自己呈示動機」,「気晴らし動機」の5因子を得ており,Twitterを介したコミュニケーションに対する動機が既存関係の延長線上にあるものと,そうでないものに分類されることや,Twitterはリアルタイム性が高いサービスであるため実況を楽しむという動機もあることを明らかにした.このように,家族や友人,または,ネット上で出会った人とのコミュニケーションを通しての関係構築や維持,情報の共有や収集,娯楽や時間つぶし,自分の思想や趣味の表現など様々な目的を持ってSNSを利用していることがわかる.
5−3. インターネットやSNSへの依存について
インターネット依存とは,過剰にインターネットを使用したり,コントロールができないほどの使用欲求を持ったりすることである.インターネットに依存することで,スマートフォンやパソコンを使う時間が長くなり,学業や仕事,家庭などの日常生活に影響をもたらしたり,他の活動のための時間が短くなったりする.インターネット依存には,様々な下位項目があり,オンラインゲーム・ギャンブル障害,SNS依存,ポルノ依存などである.スマートフォンの登場により,いつでもどこでもネットに繋がれるようになった現在,SNSの利用も飛躍的に増え,通勤中や食事中,風呂の中でまでSNSを利用しているという人も少なくない.多くのSNS依存者がネット上の人間関係で負担を感じており,睡眠時間や勉強時間,趣味の時間を犠牲にしていると感じている(河井・天野・小笠原・橋本・小室・大野・堀川,2011)との報告がある.負担や苦痛を感じながらもやめられないのがインターネット依存やSNS依存である.
5−4. SNS依存と利用動機について
SNS依存者が最もよく利用する機能は「つぶやき機能」や「アプリ」である(河井・天野・小笠原・橋本・小室・大野・堀川,2011),コミュニケーション志向がインターネット依存傾向と強く関連する(澤井・福岡,2018)との報告から,SNSに依存する者は,インターネット上での他者とのコミュニケーションを動機とする傾向があることがわかる.また,岡園(2022)によると,自己表現という利用動機でSNSを利用することが,対人関係形成のために過剰に利用することや,SNSから離れることができないことによる依存的な利用につながる.SNSで自分の感情を発信し,他者と共有することは,自己表現することにつながり,多くの人が利用動機として持っていることと考えられるが,自分の投稿に対する「いいね」やコメントで他者との関係を図ろうとしたり,それを期待したりすることは,過剰なSNSの利用につながると考えられる.また,岡園(2022)によると,娯楽という利用動機でSNSを利用することもSNSから離れることができないことによる依存的な利用につながる.SNS上には,記事や動画,写真など様々なコンテンツが集まっており,自分の趣味や興味に合わせてコンテンツをフォローすることで,新たなコンテンツを見つけることもできる.そのため,次から次へと新しい情報が入ってきて,結果としてSNS離れが困難になるのだと考える.
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