4. 同調行動について


 「同調行動」とは,「自分とは異なる意見・態度・行動を周囲から求められたとき,迷いながらも周りの意見・態度・行動に合わせてしまうメカニズム」(藤原,2006)であり,同調には「内面的同調」と「表面的同調」の2側面が見出されている。「内面的同調」とは,内心から他者の意見や行動を受けいれることで,「表面的同調」とは,表面的には同調しているように見えるが,内面では異なっていることであると示している。

 葛西・松本(2010)は,同調行動を「自分の意見を抑え,相手の意見に合わせること」と示している。本研究においても,同調行動について葛西・松本(2010)の定義にならい検討していくこととする。葛西・松本(2010)が作成した同調行動尺度は,これまでの先行研究の中から同調に関して扱っているものを参考として作成されている。この尺度は,「仲間への同調」と「自己犠牲・追従」の2因子で構成されている。「仲間への同調」は積極的に友人と同じ行動を取りたいという思いからきているものである。これは,内心から他者の意見や行動を受けいれる「内面的同調」との関連が深く,類似していると考えられる。「自己犠牲・追従」は自分を犠牲にしても友人に合わせようとするものである。これは,自分は心から納得しておらず,友人と同じ行動をしているため,「表面的同調」と関連が深いと示している。

 また,Deutsch&Gerard (1955)は,同調には多数派から受け入れられたいという「規範的影響」による同調と,他者からより正確な情報を得ようとする「情報的影響」による同調が存在すると示している。「規範的影響」は,自身の判断に確信が持てなかったり,他者からの圧力を感じたりする状況で生じやすく,「情報的影響」は,自分の判断や行動が正しいかどうかを直接確かめることができない場合に,判断の拠り所として他者の意見や行動をあてにしようとする同調行動であると示されている。しかし,横田・中西(2010)の「規範的影響」と「情報的影響」を扱った研究では,「規範的影響」と「情報的影響」の間に弱い正の相関がみられ2つの因子が完全に独立した概念ではないことを示した。これは,規範に従うように同調しやすい人の中には,同時に他者の情報を参照しやすい傾向を持つ人がいることを意味している(横田・中西,2010)。そのため,本研究で扱う同調行動では,同調行動尺度(葛西・松本,2010)で,「規範的影響」による同調と「情報的影響」による同調について触れられていないことも含め,Deutsch&Gerard (1955)が示している「規範的影響」による同調と,「情報的影響」による同調については言及しないこととする。

4-1. 自意識と同調行動の関連

 葛西・松本(2010)の研究結果から,同調行動尺度の下位尺度の「仲間への同調」,「自己犠牲・追従」と自意識尺度の下位尺度である「公的自意識」の関連について示されている。葛西・松本(2010)は,同調行動の「仲間への同調」と公的自意識の間に比較的強い正の相関がみられ,同調行動の「自己犠牲・追従」と公的自意識の間に弱い正の相関がみられたと述べている。この結果より,公的自意識が高い人ほど同調行動をとりやすいのではないかと考えられる。本研究では,自意識と同調行動の関連については公的自意識だけではなく,私的自意識においても検討していく。また,変化動機との関連性についても検討していく。



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