2. 自意識について
Fenigstein et al.(1975)は,自意識の強さの個人差を測定する尺度構成をおこなった。研究の結果,尺度構成は「私的自意識」と「公的自意識」の2つの因子によって構成された。自意識尺度において重要な概念である私的自意識,公的自意識は, いずれも自己に対して注意を向ける傾向に関するものであるという点で共通しているが,それぞれ異なった次元を構成する(菅原,1984)。第1因子の私的自意識 (private self-consciousness)は,他者からは直接観察されない自己の内面に注意を向ける程度に関する個人差を示すものであり,第2因子の公的自意識 (public self-consciousness)は,他者が観察しうる自己の外面に注意を向ける程度に関する個人差を示すと解釈された(Fenigstein et al, 1975)。
自意識尺度に関するこれまでの研究から,私的自意識,公的自意識の高い人は, それぞれ異なる特徴的な行動様式を持つことが示されている。例えば,私的自意識の高い人は,その時々での自分の意見,態度を自覚しているため,態度と行動との間の一貫性が高いことが報告されている (Scheier, 1980)。また,公的自意識が高い人は,積極的な自己呈示行動か,逆に防衛的,逃避的行動をとりやすいことを示唆している(菅原,1984)。そのため,本研究で扱う自意識と同調行動の関連ついても,私的自意識と公的自意識で異なる傾向がみられるのではないかと考えられる。
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