4.大学適応


抑うつ,不安,ストレスなどの心的不適応感を持ちやすいことも指摘されている。不注意の自覚の強い学生は,不注意行動によって批判など周囲からの否定的な態度にさらされることは多く,自尊心が低下し,無力感や罪責感にさいなまれる経験をしやすい。このような内的ストレスが増幅されると,不安障害や気分障害を併発するという,いわゆるADHDの内在化障害への展開(斎藤・青木,2010)をきたすことも想定される。

その一方で,本来持っている独創性やフットワークの軽さなどの能力を十二分に発揮し,学業や創造的な活動において活躍している学生もいるという報告も見られる(White&Shah,2001)。では,大学生活への適応不適応を決定づけている要因は何であろうか。

篠田・沢崎・篠田(2015)は,不注意と衝動性自覚のある大学生の大学生活への適応を促すためには,自分の特徴に基づいたスキルの獲得と,心理社会的発達を促す支援を同時に図るアプローチが有効であると述べている。本人の行動上の問題に基づいて,背景にある不注意と多動性・衝動性とを関連させながら自己理解を深め,自分の特徴にあったスキルを獲得すると同時に,これまでの人生での失敗や困難さの原因が自分の努力不足だけではないことを理解し,自尊心や自己肯定感を回復させることの重要性についても指摘している。



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