考察


1.配信者と視聴者のコミュニティについて

 動画配信サイトにおいて,そこでの視聴者はいわゆる通りがかりの人もいるであろうが,多くは継続して当該の動画を視聴し,配信者と視聴者の間で一種のコミュニティができあがっているのではないかと推測する。その意味で,視聴者が配信者に対してどのくらいのコミットメントがあるのか検討した。
 調査1でコミットメント尺度を用いて合成得点を求めたところ,情緒的愛着は2.571,連帯感・忠誠心は1.390であった。最高で5点,平均が3点であることを踏まえると全体的に合成得点が低いといえる。つまり,それほどコミットメントは高くないという結果であった。
 しかし,調査2のインタビュー調査を踏まえると,動画配信サイトにおけるコミュニティは2種類(2つのタイプ)あるといえる。1つは配信サイトで直接配信者に送信する配信画面に流れる不特定多数のコメントにおけるコミュニティと,もう1つは当該の動画配信サイトに関するSNSなどでファン同士が繋がってできているコミュニティである。調査1の質問紙調査でSNS投稿していると回答したのは3人だけであったため,質問紙調査で回答者が想定したコミュニティというのは,配信サイトで流れる不特定多数のコメントに基づくコミュニティか,SNSで発信している自分が直接関わったことの無い不特定多数の視聴者に対するコミュニティに関する回答と捉えて差し支えないだろう。
 調査2のインタビュー調査では,登録者のメンバー(自分以外のメンバー)についての印象についてSNSに投稿していない回答者は「色々な考えの人がいると感じる。」と回答し,配信サイトでもSNSでも投稿している(動画の登録者同士のコミュニティに所属している)回答者は「一部突っかかる人も見るが,自分の周りはいい人が多い。」と回答した。SNS上であっても直接的にやりとりする相手と,自分が直接関わっているわけではない視聴者のSNSや配信画面で流れるコメントという集団は分けて考えているといえるだろう。
 結局のところ,配信動画を中心としたコミュニティというのは,本研究の結果からは配信者が直接関わっていなくとも「○○の登録者」であるメンバーの中から各視聴者が自分が関わる相手を選び取った人のみで構成されたコミュニティであるといえる。



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