4.自己効力感について
4.自己効力感について
Bandura(1986)は,課題におけるスキルを実行するために必要な一連の行動を計画し,達成することができるかどうかに関する自己評価のことを自己効力感と定義している。また,自己効力感とは自身の過去の遂行行動に基づく期待であり,学習や学業達成に対する個人の認知的・感情的・動機づけ的要因を調整し,個人の行動において課題や活動にアプローチするかどうかや,遂行・達成,そして行動の持続性に影響するとBandura(1993)は述べている。これらのことから,自己効力感とは,自身の経験や行動から自身を評価している「できる感」といえる。
Schunk&Usher(2011)は,自己効力感と自己調整の指標とのポジティブな関連性を示し,Schunk(2012)では,自己効力感の高い学生は,より適応的な自己調整学習(目標を設定し,効果的な学習方略を使用し,メタ認知を行うなど)に従事し,学習に効果的な環境を作り出すと示している。また,Patall(2012)は,学生が課題を行うとき,自己効力感を感じることができる課題を選択する傾向にあると述べている。田中(2018)は,学習動機と自己効力感が学習行動に及ぼす影響について論じており,内発的動機づけが,学習の内容をしっかり理解するような深い学習行動に正の影響を示したとしている。一方で,外発性動機づけの中でも「同一化的調整」は,間接的に学習行動に影響を示したと述べており,学業達成に関連した自己効力感を介して深い学習行動に正の影響を示し,暗記などの浅い学習行動に負の影響を示したとしている。また,行動統制に関連した自己効力感の知覚を介して,浅い学習行動に正の影響を示し,学習行動をとらないなどの学習回避行動に負の影響を示したと述べている。さらに,Bandura(1997)では,自己効力感を「ある達成をするために必要な行動方針を計画して,実行する能力についての信念の強さ,また,社会的認知理論を構成する中心概念」と定義しており,その欠如が外発的動機づけと関連することを指摘している。
このように「自己効力感」は自身の「できる感」を認知している状態であり,宿題を含めた学習行動に影響を与えていると示されている。
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