3.学習動機づけについて


3. 学習動機づけについて

 「内発的な学習動機づけ」に関する研究として,Ryan & Deci(2000)が挙げられる。ここでは,学習動機づけを内発的動機づけ(intrinsic motivation)と外発的動機づけ(extrinsic motivation)に区分している。内発的動機づけは,興味や関心,楽しさに代表される活動自体を目的とした動機づけであり,外発的動機づけは,活動自体とは直接関係のない目的を達成するための手段としての動機づけである。学習における内発的動機づけは,適応的な学習過程を導くことが多くの研究で示されている一方で,報酬の獲得や罰の回避を目指す外発的動機づけは,少しの努力や表面的な学習行動,低い達成など,不適応的な学習過程と関連することが示されている(Harter,1981)。さらに田中(2018)は,学習動機について検討しており,中でも学習における内発的動機づけは,課題理解や自発的学習など,質の高い学習行動や高い達成と関連するなど,適応的な学習過程を導くと述べている。これらの先行研究より,内発的意欲や内発的動機づけにおける,宿題に限らない一般的な学習活動が重要であるといえる。

 しかし,学習場面においては,外発的に動機づけられる状態も避けられない(Reeve,2009)。近年では,その外発的動機づけに関して「調整スタイル」という自律性の高低を表す動機づけ変数が導入され,細分化されるようになった(田中,2018)。報酬の獲得や罰の回避,または社会的な規則などの外的な要求に基づく「外的調整」,自我拡張や他者比較による自己価値の維持,罪や恥の感覚の回避などに基づく「取り入れ的調整」,活動を行う価値を自分のものとして受け入れている状態の「同一化的調整」である。また,桜井(1989)も学習動機づけについて,学習すること自体が目標になった状態で学習を行っている「内的動機」,褒められたいあるいは叱られたくないという気持ちから学習を行っている「外的動機」,競争面や遠い将来を考えたときの遂行目標に関する動機である「外生的動機」の3つに細かく分類できるとしている。ここから,勉強が楽しい・面白いといった内発的な動機づけや褒められたい・叱られたくないといった外発的な動機づけだけでなく,友達に勝ちたいという競争心や良い成績をとりたいという優越的な動機づけ,遠い将来を見据え遂行目標を目指そうとする動機づけも,宿題などの学習への態度に影響しているのではないかと考えられる。

 さて,Wentzel & Miele(2016)は,学習動機づけ過程における内発的動機づけに加え,自己効力感も,学習者の最適な方略選択を導くことや学習の持続性を高めることを示唆しており,自己効力感についても議論が必要であると考えられる。



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