考察


2.SNS利用動機が痩身願望や精神的健康状態,ダイエット行動に与える影響について

 次に,仮説2〜3を検討するため,階層的な重回帰分析を行った.SNS利用動機が痩身願望や精神的健康状態,ダイエット行動へ与える影響を調べるため,階層的な重回帰分析を行ったところ,インターネット利用動機尺度の「繋がり欲求」から「痩身願望」に,「娯楽的利用」,「チャットでの交流」から「WHO-5精神的健康状態」に,「知識増大」から「構造的ダイエット」に有意な関連が見られた.

 これからのことから,インターネットやSNSを,自己を他者に表出することによって他者と繋がり,さびしさや悩みを紛らわすために使用している「繋がり欲求」が強い人は,痩身願望が強くなることが示され,仮説2は支持されたといえるだろう.「繋がり欲求」がダイエット行動へ与える影響には有意な関連は見られなかったため,仮説3は棄却された. まず,「繋がり欲求」が「痩身願望」に正の影響を与えていた点について考察を行う. 宇井・曽谷(2003)は自尊感情が低く,周囲から外れたくない,賞賛を得たいという賞賛獲得欲求などの異性以外の他者への志向性が痩身願望を高めることを明らかにした.また,馬場・菅原(2000)は,他者から認められたいという賞賛獲得欲求が「今より痩せられたら何かいいことがある」や「今より痩せられたら自身が持てる」など痩身に対するメリット感を高め,その体型に対するメリット感が痩身願望を強くすることを示した.また,自尊感情の低さや空虚感というような自己不全感が「今の体型のせいで性格が暗い」や「今の体型のせいで幸せになれない」など現在の体型に対するデメリット感を高め,そのデメリット感から痩身のメリット感が生じ,痩身願望を高めることも示した.よって,本研究でSNSやインターネットの使い方においても,他者から自己への賞賛や承認を求め,悩みを紛らわしたいという欲求である「繋がり欲求」の高い人が,痩身になることでより認められたいと志向することで,痩身願望が高くなったと考えられる.

 次に,「繋がり欲求」がダイエット行動に影響を与えていなかった点について2つの考察を行う.1つ目は,インターネットやSNS上で,自己を表出し,認められたいという「繋がり欲求」が高くとも,直接的にダイエット行動を促さなかった.階層的な重回帰分析の結果,「繋がり欲求」と「痩身願望」が正の関連があり,「痩身願望」とダイエット行動である「構造的ダイエット」と「非構造的ダイエット」と正の関連があった.そのため,「繋がり欲求」が高いことは「痩身願望」を介して「構造的ダイエット」と「非構造的ダイエット」のダイエット行動に正の関連を及ぼしていたと考えられる.2つ目は,自己を表出することにより,他者に認められたいと願いSNSを利用する者は,より痩身でスリムになることで外見的に認められたいと感じるが,その痩身になる過程で外見的に自信のない状態では認められたいと感じないとも考えられる.

 次に,この階層的な重回帰分析で得られた仮説にはない点に着目し,考察を行う. まず,「娯楽的利用」と「チャットでの交流」がWHO精神的健康状態に正の影響を与えていた点について考察を行う.このことから,SNSの使い方が,自分自身を楽しませ,他者と交流をすることに目的をおいている人は,精神的に健康な状態であると示された.それは,SNSを自分に軸をおいて利用することが目的であるからと考えられるのではないだろうか.SNSを,自分が楽しみ,他者と単なるコミュニケーションのツールとして利用することで,自分の存在が他者と区切られているために,精神的な健康が保つことができると考えられる.

 最後に,「知識増大」が「構造的ダイエット」に正の影響を与えていた点について考察を行う.このことから,新しい考えを取り入れることで自己の知見を広げることを目的として,SNSを利用する人は,短絡的で病的な非構造的ダイエットよりも心身の負担の軽い,長期に亘り継続が容易で健康的な構造的ダイエットを行うことが示された.それは,SNSを使って,多くの情報に触れ,正しく適切で妥当な情報を振り分けて身につけることで,ダイエットを行う際に自己にとってメリットの多い構造的ダイエットを選択することが可能になるということではないだろうか.



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