3. 内省


田口・乾(2007)や辻(2004)は,自分の感情に注意を向け,それを理解しようとすることを内省と呼んでおり,こうした内省を頻繁に行う人は,自分の気持ちや欲求を理解しやすいとしている.一方で,自覚状態理論(self-awareness theory; Duval & Wicklund,1972)によると,自覚状態が高まり自己へ注意が向いている人は,理想とする自己の姿と現在の自分の姿を比較することにより,自己評価を行うとされている.しかし,たいてい現実の自己は理想の自己像に達していないため,これらの比較による自己評価は否定的なものとなることが指摘されている(押見,1992).さらに,山田(1981)は,青年期に行われる内省は,自己の内面のなかでも,否定側面に注目しがちであることを指摘している.このように,内省は必ずしも青年にとって望ましい結果を生むとは限らない.本研究では,内省のマイナスな側面に注目し,扱うこととする.

 また,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向の影響を検討した益子(2010)の研究では,過剰な外的適応行動の「よく思われたい欲求」と内省傾向の間に正の関連が見られることがわかった.本研究では,過剰適応行動をとりがちな人であっても,自分を振り返る内省を控えることができるかについて,ストレス対処方略に注目した検討を行う.



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