考察


2.進路選択に対する自己効力感と就職不安の関連について

 進路選択に対する自己効力感と就職不安の関連について検討するため,就職不安尺度の下位尺度と進路選択に対する自己効力感尺度の相関分析と重回帰分析を行った.その結果,「進路選択に対する自己効力感」が「職場不安」や「職業適性不安」を抑制することが示された.寺上・前場(2022)は進路選択における行動変容ステージの観点から,進路選択に対する自己効力感と就職不安の関連を検討したが,進路選択行動(進路探索行動)への動機づけや行動頻度が高まるにつれ,進路選択に対する自己効力感は向上し進路選択に対する自己効力感によって就職不安は低減することを明らかにした.特に,進路選択行動(進路探索行動)の完了ステージにおいて,「就職活動不安」,「職業適性不安」,「職場不安」が低下し,「進路選択に対する自己効力感」が高まることが示された.本研究において,進路を選択決定していく動機づけが強く,進路探索行動の頻度が盛んであるため「進路選択に対する自己効力感」が高い者が多く,「進路選択に対する自己効力感」が「職場不安」や「職業適性不安」を低減するように働いていたのではないかと考えられる.また,西山(2003)は「職業適性不安」と「進路選択に対する自己効力感」の関連を明らかにし,大学生は大学を選択し入学するという遂行体験が既にあり,その経験が職業適性の不安を抑制していると考察した.関連がみられた要因として,進路探索行動の観点や本研究において対象者は自ら大学を選択し,入学するという遂行体験や職業との適応を考える経験をした者が多かったため,「進路選択に対する自己効力感」と「職業適性不安」との関連がみられたのではないかと考えられる.



back/next