考察
1.進路選択に対する自己効力感が進路探索行動に与える影響について
仮説1の検討のため,進路選択に対する自己効力感尺度の下位尺度である「進路選択に対する自己効力感」を独立変数とし,進路探索行動尺度の下位尺度である「情報収集」,「外的活動」,「自己内省」,教員養成課程に関わる進路探索行動尺度の下位尺度である「教職をめざすための情報収集」,「教職の積極的対処行動」,「教職のための自己内省」を従属変数とした重回帰分析を行った.進路選択に対する自己効力感とそれぞれの進路探索行動との間に有意な関連がみられた.進路選択に対する自己効力感は説明会やインターンシップに参加するなど実際に進路先での仕事を体験し,試行する「外的活動」や教職をめざすにあたり行う情報収集である「教職をめざすための情報収集」,教職を志望するにあたり自身のことを振り返る「教職のための自己内省」を促すことが明らかになった.進路選択に対する自己効力感と進路探索行動との関連について富永(2000)は自己分析やマスメディアが進路選択に対する自己効力感に肯定的に影響をすることを明らかにし,進路選択過程においてマスメディアによる情報や自己を振り返る自己分析が重視されることが示唆された.教職志望においても教職をめざすにあたり自身のことを振り返る自己内省は進路選択過程において重要であり,進路選択に対する自己効力感が高くなるほど行われる傾向にあると考えられる.若松(2006)において,目指す進路が決定している学生が進路を決定するうえで抱える納得感や非心配感が「外的活動」と関連が明らかにされた.本研究の結果から,納得感や非心配感のほかに進路選択に対する自己効力感も体験・試行する「外的活動」を促すことが示された.また,安達(2001)において,進路選択に対する自己効力感が情報収集行動や自己内省を促すことから,先行研究と結果は一致し,教員志望者においても「進路選択に対する自己効力感」がそれぞれの進路探索行動に及ぼす影響は変わらないことが分かる.このことから,教職志望の学生において,就職するうえで進路を選択・決定する過程で必要な行動に対する遂行可能感を高める手立てが必要であると考える.
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