4.ストレス
ストレスに関する学説について,ここでは中心的な2つの学説を紹介する。
一つ目に,ストレスという考え方を最初に提唱したとされるSelye, H.のストレス学説である(松田, 1997)。本学説では,ストレスは,精神的有害刺激に対してホメオスタシス(恒常性)を保つ生体反応であると定義される。例えば,体温が低下したときには代謝が促進され熱を生む。このように,ストレスは刺激から身を守るための反応として考えられた。そして, 松田(1997)では,Selyeが,この生体反応を「汎適応症候群」と「局所適応症候群」に分けたことに言及している。汎適応症候群は,ストレスの原因に関わらず常に同じ全身的反応として生じるものを指し,さらに,その過程は警告期,抵抗期,疲憊期に分けられるとされる。一方,局所適応症候群は,直接刺激を受けた局所の反応として生じるものを指す。生体的反応として捉えられるストレスであるが,自律神経系や内分泌系をはじめとした体内の反応だけでなく,エネルギー供給の不足により心理的機能においてもストレスとして反応が生じるとされる(松田, 1997)。
二つ目に,Lazarus,R.S.によるストレス理論である(小杉, 2006)。本理論では,ストレスは個人と環境の相互作用であり,認知と対処に焦点を当てている。Lazarus(1988 林訳 1994)において,ストレスを過程として捉え,ストレッサーを評価する一次評価と二次評価に分けると言及される。小杉ら(2006)によると,一次評価では,ストレッサーの有害さや程度を主観的に評価する。これには,個人の価値観やパーソナリティが機能する。二次評価では,一次評価でストレスが脅威だと評価された場合に,どのような対処(コーピング)を行うのか認知する。これらの過程を通して,コーピングしたとしても,ストレッサーの低減が少ないほど苛立ち,緊張,憂鬱など様々な負の感情が生起されてしまうと言及されている(小杉ら, 2006)。
これらの考え方について,池田ら(2014)では,Selyeがストレスの主に生物的側面, Lazarusが心理的側面に着目しているものだと述べている。生物的側面では,心理的ストレス反応とは,ストレッサーにより生じる生体的な特異状態である一方,心理的側面では,環境を外部に留まる問題だとするのではなく,ストレスの受け手である個人が,ストレッサーをどのように認識しているのかを重要視している点に違いを認めている。また,Lazarus(1984 本明ら訳1998)では,ストレッサーは,ある人にとってはストレスであっても他者にとってはストレスに感じられない場合もあり,環境からなる条件以上に,個人の特質からなる環境との関係によってストレスを定義していく必要があると述べられている。
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