今後の課題


  ここで、今後の課題を挙げる。本研究では、シャイな人物のスキルに関する問題を明らかにするため、シャイネスに対する治療アプローチとしての社会的スキルトレーニングで中心となる主張性スキルとシャイネスの関連を検討することが第1の目的であった。よって、シャイネスの主張性スキルの問題をより明確にするために、シャイネスを「対人不安傾向」と「対人消極傾向」から構成される概念とし、4つに分類して分析を行なった(「高不安―消極群」、「高不安―積極群」、「低不安―消極群」、「高不安―積極群」)。その結果4つに分類された、それぞれ特徴の異なるシャイネスのタイプによって、欠如もしくは所持する主張性スキルの側面・程度が異なることが明らかとなった。特に、「対人不安傾向」の高さが、主張性スキル欠如に関連していると思われる結果が得られた。しかし、対人場面において不安を感じているにも関わらず、他者と積極的に関わろうとする「高不安―積極群」は、おなじく対人場面で不安を感じる「高不安―消極群」と比べて対人場面において、他者との関係を円滑に進めるために「肯定的な感情・思考表明」スキルを発揮していることが明らかになった。よって、シャイネスと主張性スキル欠如は、同一ではないことが一応は示されたといえる。しかし、これらの結果からは、シャイな人物の主張性スキルに関する問題点を明らかにするほどの情報は得られなかったといえる。シャイな人物の主張性スキル欠如に関する問題点を明らかにし、スキルトレーニングで活かしていこうとするのであれば、欠如している一部分に焦点を当てるのではなく、他の社会的スキルと共に、総合的に見ていく必要があるといえる。つまり、欠如しているスキルと、所持している社会的スキルとの関連性を見ることが必要ではないかと思われる。本研究での結果より、対人不安を抱えているが、シャイには見えないような人物は、他者との関係を円滑にするようなスキルを用いており、一見問題を抱えていないと思われがちである。しかし、他者と積極的に関わることで、対人関係上のトラブルに巻き込まれることも多くなり、そのような場面で、必要とされる「権利防衛」「否定的な感情・意見表明」スキルが欠如しているような場合は、例え「肯定的な感情・思考表明」スキルを所持していたとしても、柔軟に対応することができず、自己不全感を高めて結果的には対人的不適応の状態に陥ってしまう可能性があるといえるのではないだろうか。社会的スキルは、様々な環境・状況・相手によって、柔軟に使い分けられてこそ、適応的な対人関係を運営することが可能となる。つまり、社会的スキル訓練が効果的になされるには、不足しているスキルのみでなく、その個人の環境・状況に対応したスキルを同時に習得する必要性があるといえる。

 また、今回は、主張性スキルのみを研究の対象として取り上げたが、その他の社会的スキルとシャイネス及び対人ストレスイベントとの関連を含めた研究の余地が残されたといえる。

 また、今回性差に関しては、分析対象として取り上げなかった。しかし、古市(1993)は、自己主張の程度や側面が、性差や性格特性によって異なることを確認していることから、性差を含めた研究の余地が残されたといえる。


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