V【結果】

1.各尺度の因子分析結果



質問紙に用いた尺度がどのような因子から構成されているのかを明らかにするために、因子分析をした。
公的自己意識尺度
先行研究と同じように公的自己意識尺度は1因子からなる尺度になった。クロンバックのα係数は0.868であった。
自己関連付け尺度

因子1は「友達が内緒話をしていると、自分の悪口を言われているのではないかと気になる」というような内容4項目から 成り立っており、自分が友達からなにか否定的にいわれているという意を表す《悪意》因子と命名した。
因子2は「会話や電話で沈黙が続くと、相手に嫌われているのではないかと思うことがある。」というような内容5項目から 成り立っており、避けられている、嫌われているという意を表す《疎外感》因子と命名した。
全項目のクロンバックの信頼性係数は0.895で、悪意因子のα係数は0.896、疎外感因子のα係数は0.823であった。
対人的自己効力感尺度
因子1は「私は誰とでも気軽に話せる」といったような内容8項目から成り立っており、先行研究を参考に 《社会的スキルの自信》因子と命名した。
因子2は「私は心から信頼できる友達がいる」のような内容6項目から成り立っており、先行研究を参考に 《友人への信頼》因子と命名した。
因子3は「私は友人に信頼されている」というような内容5項目から成り立っており、先行研究を参考に 《友人からの信頼》因子と命名した。
全項目のクロンバックの信頼係数はα=0.855、社会的スキルの自信因子のα係数は0.804、友人への信頼因子のα係数は0.823、 友人からの信頼因子のα係数は0.765であった。

2.各因子間の関連性


因子分析によって得られた各因子間の相関係数〔ピアソンの積率相関係数〕を求めた。
「公的自己意識」と自己関連付け尺度全体との間に有意な正の相関がみられた(r =.68 p<.001)。 公的自己意識と自己関連付けの下位尺度因子T「悪意」との間に(r =.63 p<.001)、 因子U「疎外感」との間に (r =.60 p<.001)の有意な正の相関が見られた。
対人的自己効力感尺度全体、因子T「社会的スキルの自信」、因子U「友人への信頼」、因子V「友人からの信頼」と、 自己関連付け尺度全体、因子T「悪意」、因子U「疎外感」の各因子得点間の相関係数を求めた。 自己関連付け尺度全体と対人的自己効力感尺度全体とのあいだに有意な負の相関〔r=-.16 p=<.01〕が見られた。
また、下位因子ごとに見てみると、因子T「社会的スキルの自信」と因子T「悪意」との間に有意な相関〔r=-.16 p=<.05〕、因子 U「友人への信頼」と因子U「疎外感」との間に有意な相関 〔r=-.13 p=<.05〕 が見られた。 しかし、それぞれの相関係数はほとんど無相関に近い、極めて低い値であった。 

3.自己関連付け尺度得点について公的自己意識、対人的自己効力感を2要因とした分散分析


1-1 「公的自己意識」得点と「対人的自己効力感」得点を独立変数、自己関連付けを従属変数として
分散分析の結果、Fig.1に示したように公的自己意識の群の主効果[F〔1,266〕=113.9〕p<.001]、 対人的自己効力感の群の主効果[F〔1,266〕=7.97〕p<.01]が有意であった。。





Fig.1



2-1「公的自己意識」得点と「友人への信頼」得点を独立変数、「悪意」得点を従属変数として

分散分析の結果、Fig.2に示したように公的自己意識の群の主効果が有意であった〔F〔1,266〕=93.42〕p<.001〕。 また、「友人への信頼」因子の群の主効果も有意であった〔F〔1,266〕=5.93〕p<.01〕。





Fig.2



2−2「公的自己意識」得点と「友人への信頼」得点を独立変数、「疎外感」得点を従属変数として

分散分析の結果、Fig.3に示したように公的自己意識の群の主効果が有意であった〔F〔1,266〕=81.39〕p<.001〕。   また、「友人への信頼」因子の群の主効果も有意であった〔F〔1,266〕=5.59〕p<.01〕。





Fig.3



4.公的自己意識得点HL、対人的自己効力感得点HLを組み合わせたHH、HL、LH、LLの4群を独立変数とし、 自己関連付け得点を従属変数とした一要因分散分析と多重比較の結果

1.自己関連付け尺度を従属変数として



「a.公的自己意識が高く、対人的自己効力感が低い、つまり、他者からの目が気になり、対人場面において自分に自信のもてない人ほど、自己関連付け傾向が高いであろう。 b.反対に、公的自己意識が低く、対人的自己効力感が高いほど、自己関連付け傾向は低いだろう。」という仮説Aを検証するため 次の分析を行った。
先ほど、公的自己意識、対人的自己効力感において群の主効果がそれぞれ有意であったので、 公的自己意識得点、対人的自己効力感得点の平均の値で被験者をH群、L群に分け、その組み合わせで、 HH群、HL群、LH群、LL群の4群に分け、4つの群の自己関連付け得点の平均値の差の比較を行った。
1要因分散分析の結果、4群の間の有意な差が見られた〔F〔3,266〕=40.71〕p<.01〕。
多重比較の結果、LH群とLL群間の差は有意ではなかったが、そのほかの群の間には有意な差が見られた。
自己関連付け傾向の強さは、HL>HH>LL≒LHとなり、最も自己関連付け傾向が高かったのは、 H−L群〔M=3.43、SD=0.71、N=74〕で、続いてH−H群〔M=3.09、SD=0.76、N=77〕であった。
公的自己意識が高く、対人的自己効力感が低い群が最も高い自己関連付け傾向を示した。

4群の平均の差は自己関連付け全体、悪意因子、疎外感因子のどれにおいても、 公的自己意識が高く、対人的自己効力感が低い群が最も高い傾向を示した。





Fig.4




【要約】 【問題と目的】 【仮説】 【方法】 【考察】