児童のためのマルチメディア情報発信支援システムの開発とその利用効果

■第2章

システムの開発
2.1 システムの概要 2.2 作成支援 2.3 発信支援 2.4 活用支援 ←それぞれのページにリンクしています

 2.1 システムの概要
 
 児童がWebページを作成して情報発信しようとした時,指導者側が事前に児童の実態に合ったハードウェア(コンピュータ)とソフトウェア(ホームページ作成ソフト・マニュアル)を準備し,十分な場を提供したつもりでも,ユーザー(児童)のニーズをうまく満たすことができず,使いにくかったり,解りにくかったりすることがあった。
 その理由として,ハード・ソフトウェア提供者(教師)が,ユーザー(児童)の声(使用感・ニーズ等)を十分に把握する機会が少なく,そのギャップから生じることが多いと考えられる。
 そこで,それを補う第3のウェアとして,ユーザー情報を収集し生かしていく「ユーズウェア」(*1)が重要となってくるのではないかと考えた。
 現在,ハードウエアだけではなくソフトウエアも非常に多様化・複雑化している。また,それを解説するマニュアルも同様である。辞書のようなマニュアルの中でユーザーが知りたい情報を探し当てるのに大変な労力が必要だったり,ヘルプ機能が自分の知りたい情報を得ることがなかなかできず,ヘルプになっていない等,使いたくても使えない状況が多々ある。しかしその中には,ハード・ソフトウェア提供者(教師)とユーザー(児童)の情報交換をより充実させることで,その溝がかなり埋まるのではないかと考える。
 そこで,本システムでは,マニュアルを充実させるだけではなく,ユーザー情報を充実・重視することが,ユーザがより使いやすい発信システムにつながるのではないかと考え,それを「ユーズウエア」と呼ぶことにする。
 本システムでは,この「ユーズウェア」の部分をシステムの中に組み込み,有効に機能するような情報発信システムができないかと考え,「児童用Web情報発信支援システム」を開発した。
 また,情報発信に際して気をつけなければいけない「情報モラル」への配慮も,児童が主体的に行っていけるよう,システムの流れの中に組み込んだ。
 児童用Web情報発信支援システムは,大きく分けて「作成支援」「発信支援」「活用支援」の3つの部分から成り立つ(図2−1)。
 
具体的活用イメージは表2−1の通りである。

表2−1 システムの具体的活用イメージ
@児童は,作成支援マニュアルの中から,自分が使いたいマニュアルを選ぶ。 作成支援
AWebページ作成を行う。
Bできあがったページを,情報モラル上問題がないのかを発信支援システムを使ってチェックし,最終的なWebページ完成とする。 発信支援
C教師の手で,学校Webページへ発信 活用支援
D作成活動を振り返り,「アンケート」に答える。
E「投稿情報」や「指導事例集」をみて,今後の活動に役立てたり,自分も 投稿・事例集掲示に参加したりする。(これらの情報は,作成前に作成例・ 所要時間等多くの情報を得るのにも活用できる)
*システム開発者は,これらの活動から得たユーザー情報を,システムの改善に反映する。 評価・改善
 
これら一連の流れを含めて「児童用Web情報発信支援システム」(図2−2)と呼ぶ。
 本システムのURLは「http://ravel.edu.mie-u.ac.jp/~koyama/sien-top/」である。

(*1)「ユーズウエア」とは,最初に末武国弘(1983)が「教育工学」(高橋省己編)の中で使っている。該当の箇所を引用すると「一般に現在の教育界では,教具や教育機器を導入するとなると,大変そのハードウエアに凝られる先生が多いように見受けられる。しかし,実際に授業を大切にするのなら,それよりもむしろソフトウエアに凝った方がよく,さらに視点を使い方(useware)にも向けた方がよい。すなわち,先生方はソフトウエアとユーズウエアの『製作』に大きな労力をかけるべきで,それでちょうどハードウエアとのバランスがとれるようになる。」と述べている。


図2−1 児童用Web情報発信支援システムの概念図



図2−2 「児童用Web情報発信支援システム」トップ画面


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