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方法のページここは方法のページです。 1.調査対象 1.調査対象三重県の国立大学の学生201名(1年77名・2年67名・3年21名・4年以上24名・院生11名・それ以外1名)を対象に,質問紙調査を実施した。 調査時期は2007年12月上旬であった。 2.調査実施状況質問紙調査は,授業の一部の時間を利用して実施された。また,個人的に調査を依頼し,その場または後日回収した。 質問紙に回答するのに要した時間は約20分程度であった。 3.質問紙の構成質問紙はフェイスシート,日本語版対処的悲観性尺度(J-DPQ;Japanese version of the Defensive Pessimism Questionnaire),合衆国国立精神保健研究所疫学的抑うつ尺度(CES-D;Center for Epidemiologic Studies Depression Scale ),The Proactive Coping Inventory日本語版,文章完成によるストレス刺激活性前の予防的行動の内容記述(2パターン:between),3次元モデルにもとづく対処方略尺度(TAC-24;Tri-Axial Coping Scale)から構成された。 フェイスシートでは調査についての説明がなされ,回答者の基本属性(学部・学年・年齢・性別)が尋ねられた。各尺度については以下のとおりである。 (1)日本語版対処的悲観性尺度(J-DPQ) 対処的悲観性を測定する尺度として,Hosogoshi & Kodama (2005)で開発された日本語版対処的悲観性尺度(Japanese version of the Defensive Pessimism Questionnaire:以下J-DPQとする)を用いた。判別項目1項目とフィラー項目2項目を含む計11項目から構成される。判別項目は,過去の成功認識を問う項目であり,DP者およびSO者を抽出する際の一つの基準として用いられる。試験や試合や発表といったベストを尽くしたい・うまく成功したい状況を想像して回答するように教示された。回答は7件法(“1.全くあてはまらない”―“7.非常にあてはまる”)で求められた。採点に際しては,7件法の回答にそのまま1〜7点を割り当て,合計得点を算出した。得点が高いほど対処的悲観性を,得点が低いほど方略的楽観性を用いる傾向が強いことを示す。 (2)合衆国国立精神保健研究所疫学的抑うつ尺度(CES-D) 最近の1週間における抑うつ状態の重症度を測定する自己記入式尺度であり,20の主要な抑うつ症状から構成されている。回答は4件法(“1.まれに〜なし(1日未満)”―“4.ほとんど〜いつも(5日:7日)”)で求められた。採点に際しては,“まれに〜なし(1日未満)”には0点を,“いくらか〜少し(1日:2日)”には1点を,“時に〜まあまあ(3日:4日)”には2点を,“ほとんど〜いつも(5日:7日)”には3点を与えて,合計得点を算出した。 (3)The Proactive Coping Inventory:日本語版 コーピングの予防的側面を測定する尺度としてTakeuchi & Greenglass (2004)によって作成されたThe Proactive Coping Inventory日本語版(以下PCI-Jとする)の中から,能動的コーピング,内省的コーピング,計画的コーピング,予防的コーピング,全39項目を用いた。本来PCI-Jは「能動的コーピング」と訳され,コーピングの積極的側面を捉える尺度として理解されるが,今回はその項目内容からストレス刺激が活性化する前の予防的コーピングとして解釈し,尺度として採用した。回答者は「以下は,様々な状況に対する反応についての記述です。自分の日常の対応とどの程度あてはまるか考えて,各々の文章に対しあなた自身がもっとも適当だと思う数字に○をつけてください。」と教示され,回答は4件法で求められた。採点に際しては,4件法の回答にそのまま1点〜4点が割り当てられ,因子分析によって得られた下位因子ごとに尺度得点を算出した。 (4)3次元モデルにもとづく対処方略尺度 想起したストレス事態に対しておこなわれた対処方略を測定するために,3次元モデルにもとづく対処方略尺度(Tri-Axial Coping Scale:以下TAC-24とする)を用いた。これは,コーピングの分類次元として3つの軸を設定し,それらの組み合わせで構成される8象限のそれぞれに対応した項目群による8下位尺度から構成されるため,多面的なコーピングを容易に捉えられる。3軸に該当するものは「問題焦点―情動焦点」「接近―回避」「行動―認知」である。これらの組み合わせによる8下位尺度とは,情報収集(問題焦点・接近・行動),放棄・諦め(情動焦点・回避・認知),肯定的解釈(情動焦点・接近・認知),計画立案(問題焦点・接近・認知),回避的思考(情動焦点・回避・認知),気晴らし(問題焦点・回避・行動),カタルシス(情動焦点・接近・行動),責任転嫁(問題焦点・回避・行動),である。また,8下位尺度の2次因子分析では,問題解決から回避する性質と,問題解決に向かいかつ他者のサポートを利用する性質,および肯定的に解釈したり気そらしなどで情緒調整に向かう性質の3因子構造が確認された。本研究では8つの下位尺度と3軸の2つを採用する。計24項目から構成され,それぞれ5件法(“1.することは決してないだろう”―“5.そうするだろう”)で回答を求めた。採点に際しては,5件法の回答にそのまま1〜5点を割り当て,下位尺度ごとに合計得点を算出した。得点が高いほどその対処方略をよく用いたことを示す。 4.手続きすべての被調査者に対し,経済状態場面として保護者に資金援助を要請するというシナリオを提示した。シナリオは2パターン用意され,対象者の負担を軽減するため,あらかじめ各対象者をL条件群とJ条件群とにわけた。全被調査者のうち,99名の被調査者には“重要な課題で自分一人が取り組む状況を想定させる条件(L条件)”を,102名の被調査者には“重要な課題を他者と共有する状況を想定させる条件(J条件)”を提示した。 具体的には,L条件では「あなたは,行きたい講習会があります。その講習会に参加すると取りたい資格が短期間でとれるのですが,開催場所が遠く,数回に渡って参加しなければならないため,参加するには保護者に資金面での援助をしてもらわなければいけません。今からではアルバイトをしても間に合わなさそうです。あなたは,先日故障したパソコンの修理代を負担してもらったばかりです。」という文章を提示し,J条件では「あなたは,友人と海外旅行に行く約束をしましたが,現在の貯金額では行けません。また,海外旅行に行く日は,毎年恒例の家族旅行の日でもあります。どうしても海外旅行に行きたいのですが,今からではアルバイトも間に合わず,海外旅行に行くためには,保護者に資金面で援助をしてもらわなければいけません。」という文章を提示した。被調査者には,それぞれの文章に表される状況を十分にイメージさせたあと,「保護者に資金援助を,実際に申し出るまでに,あなたはどのような準備をしますか。ここで言う「準備」とは,行動面やメンタル面を含んだ,あらゆる可能性に対して備えることです。以下の5つの文章を完成させてください。」という質問に「____のとき____ために____しておく」という文章を5つ完成させることが求められた。続いて,すべての被調査者に対し,「保護者は講習会(海外旅行)には反対で,資金も援助してくれません。講習会(友人との海外旅行)は諦めざるを得ません。」という失敗場面を提示し,その出来事に直面した際に採用する対処方略についてTAC-24に回答させた。 分析をおこなうにあたって,まずこの両群が等質な集団であることを明らかにする必要がある。そこでこれら両群のすべての対象者が回答しているJ-DPQについて,L条件群とJ条件群との間の差について,t検定法による両側検定を実施した。両群を比較してみた結果,両群には有意な差は見られなかったため,この両群の対象者はJ-DPQに関し等質であるとみなし,以降の分析は両群を込みにしておこなった。 また,自由記述の扱いについて,回答は1つについて1点が与えられた。分類は目的に沿っておこなわれ,@成否除外A失敗想定B成功想定から成る「成否想定(事前・事後)」カテゴリーを構成した。1人につき5つの回答を持つが,たとえば,「成否除外」に該当する回答を3つ持っていれば「成否除外」カテゴリー得点は3点,「失敗想定」に該当する回答を2つ持っていれば「失敗想定」カテゴリー得点は2点,「成功想定」に該当する回答を持っていなければ「成功想定」カテゴリー得点は0点となる。
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