方法

ここは方法のページです。

本研究では,SPとの相互作用が予期される社会的文脈と,SP以外の第三者の存在という社会的文脈の知覚が,SPの評価にどのような影響を及ぼすのかを,質問紙を用いて検討する。

1.調査対象者
2.要因計画
3.実験刺激
4.手続き
5.質問紙の構成

1.調査対象者

 国立M大学の学生175名(平均年齢19.64歳,男性62名,女性112名,不明1名)

Page Top

2.要因計画

@地位条件(高地位条件・低地位条件)

 SPの知的水準を操作することで地位条件とした。具体的には,SPの知的水準が知覚者よりも高い条件(高地位条件)と低い条件(低地位条件)を設けた。

A社会的文脈条件(友好条件・敵意条件・統制条件)

 知覚者の置かれる社会的文脈を操作することで社会的文脈条件としてた。具体的には,「友好的相互作用」を想起させる条件(友好条件),「敵意的相互作用」を想起させる条件(敵意条件),そのような相互作用を想起させない条件(統制条件)を設けた。

B他者条件(他者有り条件・他者無し条件)

 SPが置かれている社会的文脈を操作することで他者条件とした。具体的には,SPと知的に同水準の特定他者が存在する条件(有り条件)とそうでない条件(無し条件)を設けた。

以上のように,2(地位条件)×3(社会的文脈)×2(他者)の被験者間3要因配置とし,各条件に実験協力者を無作為に割り当てた。

Page Top

3.実験刺激

@文脈条件操作文

 友好条件では「友好的相互作用」が想起できるような文章を,敵意条件においては「敵意的相互作用」が想起できるような文章を提示した。

【友好条件】

 「あなたは友人の紹介であるアルバイトをすることになりました。その友人はあなたと同じアルバイト先に,他大学に通う小林達郎君も紹介しており,あなたと小林達郎君は同じ時期に同じところでアルバイトをすることになりました。しかし,まだ会ったことがないため,小林達郎君がどのような人物なのか分かりません。」

【敵意条件】

 「就職活動をしている自分を思い浮かべてください。あなたにはとても就職したい会社があります。しかし,就職できるかどうかは五分五分といったところです。そんな時,あなたの友人が『他大学に通っている僕の友人の小林達郎という子が,君の第一志望の会社の面接を受ける。』と言いました。でも,小林達郎君がいったいどのような人物なのか分かりません。」

A他者条件操作文

 他者有り条件においてはSPと知的に同水準であることが明確に分かる特定他者が存在することを示す文章を提示した。

【他者有り条件】

 「あるブログの中で,ある大学の学生である小林達郎君について書かれた文章を見つけました。この文章のあったブログは,小林達郎君と同じ大学に通っており,彼とは小学校の時からの友人である加藤君が定期的に書いているブログだそうです。」

B行動記述文

 行動記述文は池上(2006)によって用いられた文章を加筆修正して使用した。地位条件を操作する文章として,高地位条件においてはSPの知的水準が高いと受け取れるような文章,低地位条件においてはSPの知的水準が低いと受け取れるような文章を冒頭に挿入した。さらに,文章全体をSPと知的に同水準であると受け取れる第三者による紹介文とすることで他者有り条件とした。

Page Top

4.手続き

 大学の授業時間の一部を利用して実験冊子を一斉配付し,実験者の指示の下で,以下のような手順で実施した。所要時間は15分〜20分程度であった。

 まず,他者の印象形成に関する調査であるという説明を行い,フェイスシートから順に記入させた。その後,行動記述文を読んで印象を形成するよう求め,一連の項目に回答させた。

@大橋ら(1973)によって選定された20対の特性形容詞対尺度を用いて4を中点とする7段階(1−7:非常にあてはまる−かなりあてはまる−ややあてはまる−どちらともいえない−ややあてはまる−かなりあてはまる−非常にあてはまる)で評定させた。

Aさらに,情報をどのように処理し,利用しているのかについての指標を得るため,行動記述文の中から実験者があらかじめ選び出しておいた望ましくない行動(以下,N行動)と望ましい行動(以下,P行動)の原因は何であると思うかについて自由記述により尋ねた。

【N行動】

 「待ち合わせの時間に半時間も遅れてきたにもかかわらず,特に謝  るでもなく,さっさと目的地に向かって歩き始めた。」

【P行動】

 「公園には献血車が来ていて献血を呼びかけていたが,彼は,さっそ  く献血に協力していた。」

Bターゲットと自己を比較してどちらが知的特性および対人的特性において優れていると思うかを7件法(1−7:自分の方が非常に優れている−自分の方がかなり優れている−自分の方がやや優れている−どちらともいえない−SPの方がやや優れている−SPの方がかなり優れている−SPの方が非常に優れている)により回答させた。

Page Top

5.質問紙の構成

<P.1>

 フェイスシート:実験参加者の所属学部,学年,年齢,性別について尋ねた。

<P.2>

 ページの中央部に,文脈条件操作文が書かれていた。ただし,他者有り条件においては,他者条件操作文も続けて書かれていた。

<P.3>

SPについての行動記述文が書かれていた。

<P.4>

SPの印象評定に用いる特性形容詞対尺度が設けられていた。

<P.5>

SPのN行動およびP行動の原因推論を記述する自由記述欄が設けられていた。

<P.6>

知的特性と対人的特性についての優劣評定,他の研究で利用するための項目(2項目),意見や感想を記述する欄が設けられていた。

 本研究では,以上のような全6ページからなる質問紙を用いて実験を行った。

戻る HOME 次へ

Page Top