仮説1:援助要請の妥当性とその印象との関係の検討
印象評価尺度の各項目の得点を,援助要請の妥当性有と妥当性無で比較した結果,全ての場面において,妥当性が無い時のほうが,ネガティブな印象を形成していた。特に,印象評価尺度の中の「個人的親しみやすさ」に分類される項目(感じの良い,人の良いなど)は,妥当性無の時にネガティブな方向に評価されていた。つまり,その場面で援助要請の妥当性が低いと判断される時,印象評価としては,「個人的親しみやすさ」で括られる印象のなかで,ネガティブな方向の親しみやすさ,つまり思慮深くない軽率な行動としてとらえられてしまうということが考えられる。援助要請行動についていえば,その援助要請行動に妥当性があるのかといった判断が一つの判断基準になっていると考えられる。これは仮説1を一部支持する結果であった。
仮説2:援助要請の内容とその印象との関係の検討
印象評価尺度を場面ごとに因子分析をした。その結果,場面ごとに異なる下位因子の構成が見られた。
場面Aでは,援助要請妥当性有の時には,ポジティブな印象もネガティブな印象も形成しているが,妥当性無の時にはネガティブな印象しか形成していない。これは,援助要請内容が,「自尊心への脅威」が大きいものであったために(野崎ら,2004),妥当性が有っても,そのような行動をしてしまうとネガティブな印象を抱いたのではないかと考えられる。
場面Bでは,援助要請の妥当性の有無に関わらず,ポジティブな印象もネガティブな印象も形成していた。これは,援助要請内容が日常的なものであり,回答者自身の考えなどを反映させた印象を形成しやすかったためではないかと考える。
場面Cでは,今回の回答者においては,援助要請の妥当性の有無に関わらず,同じような印象評価をしていることがわかった。これは,援助要請内容が一つの判断基準となったからではないかと考える。
場面Dでは,援助要請の妥当性有無によって形成される印象の差は見られなかったが,下位因子のなかの項目を見ていくと,援助要請の妥当性有の場面において,「社交的な」という印象が強く形成されていた。これは,妥当性有の場面では,援助要請理由として,「客観的な意見を聞いてみたい」ということが想定場面内にあり,客観的視点を意識して,他者と交流することができる「社交的な」人であると印象づけられたのではないかと考える。以上より,仮説2は支持される結果となった。
仮説3:援助要請スタイルと援助要請者への印象との関係の検討
援助要請スタイルの過剰型,回避型,自立型のそれぞれの得点と印象評価の下位因子の関係を重回帰分析で見た。その結果,場面Aでは,回避型得点が妥当性の無い時ネガティブな印象を説明していた。場面Bでは,援助要請妥当性有の場面において,回避型の得点がネガティブな印象を,また,援助要請妥当性無の場面においては,過剰型または回避型の得点がポジティブな印象を説明していた。場面C,場面Dでは,はっきりとはでなかったが,「恥ずかしがり」という印象項目が過剰型から説明されていた。このことから,援助要請者に対する一部の印象評価に対して,評価者の援助要請スタイルが関係していることがわかるが,援助要請場面の内容によって異なっていたため,仮説3は一部支持されたということになる。
以上のことから,援助要請をする人の印象評価には援助要請の内容が大きく影響するが,評価する側の援助要請スタイルも少なからず影響してくる。そのため,援助要請者に対する印象評価に着目することで,援助要請を評価した人がその援助を求めるのかがわかり,必要な援助を求める事ができない人に対しては,援助要請に対する印象評価へのアプローチをすることで,自ら「助けられる」ことができるようになるのではないかと考えられる。
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